stay with me
2006.08.07 Monday | category:なのはSS(フェイト×なのは)
なのはの部屋で、以前自分が送ったビデオメールを見つけるフェイトだったが――。まぁ非常にありがちなお話ですな。
この話では既に2人ともラブラブですが、このぐらいのやりとりだったらこの2人は告白前でも普通にしてそうな感じ。全くあの2人はもうね!
この話では既に2人ともラブラブですが、このぐらいのやりとりだったらこの2人は告白前でも普通にしてそうな感じ。全くあの2人はもうね!
「たっだいまー」
「お邪魔します」
いつもの放課後、なのはの家。出迎えてくれたのは桃子さんだった。
「おかえりなさい、なのは。フェイトちゃんも」
「あ、はい……」
こうして晩ご飯の時間までなのはの家で過ごすのも、すっかりいつものこと。
なんだか、自分の家がふたつあるような気分だ。
「なのは、お洗濯もの畳んであるから、お部屋まで持っていってね」
「はーい。じゃあフェイトちゃん、先にわたしの部屋、あがってて」
「うん」
ぱたぱたと走っていくなのはを見送って、私は二階のなのはの部屋に向かう。
もうすっかり入り慣れた部屋。クッションに腰を下ろして、私はひとつ息をつく。……なのはがいないと、ちょっと手持ち無沙汰だ。
何となく部屋の中を見渡してみて……ふと、机の上に並んだ簡素なDVDケースの存在に気付く。
「……これ」
それは、まだ私があの事件の裁判を受けていた頃、なのはに送ったビデオメールだった。
6月のはじめから、再会直前の12月まで……半年分のビデオメールは結構な枚数で、自分でもこんなに送っていたことに驚いてしまう。
あの頃は、画面越しに見ていたなのはの顔。時間差でしか届かなかった声。けれど、今は――
「お待たせ、フェイトちゃん。……あれ、どうしたの?」
「なのは……あ、えと」
私が手にしたDVDを見て、なのははちょっと照れくさそうに笑った。
「あ、それ……昨日、ちょっと久しぶりに見てたの」
「そうなんだ」
「もう何度も見たんだけどね」
机に並んだDVDに、なのはも手を伸ばす。手と手、顔と顔が近づいて、ふわりといい匂いが鼻腔をくすぐった。
……なんだか、昔の自分の映像を見られたんだと思うと、ちょっと恥ずかしい。
「それで……見てたら、フェイトちゃんと離れてた頃のこと、思い出して」
と、なのはの顔がこちらを向いた。すぐ近くで見つめる、なのはの瞳。
すっと、なのはが顔を近づけて――ほんの一瞬だけ、唇が触れあう。
――わ、な、なのは……
いきなりキスされるとは思わなくて、不意打ちの恥ずかしさに顔が真っ赤になってしまった。
なのはも照れたようにはにかんで……それから、きゅっと私の手を掴んだ。
「今は、こうしていつでも、フェイトちゃんと触れあえる。お話ができるけど……あの頃は、それができなかったんだよね」
そして、なのはは私の胸に身体をあずけてくる
「……どうしてあの頃、それが平気だったのか、もう思い出せないよ」
「なのは……」
伝わってくるなのはの温もりと重み。高町なのはという少女が、いま私の胸の中にいる証。
私はなのはの髪を撫でる。トレードマークのツーテールが、ぴょこんと手元で揺れた。
「ねえ、フェイトちゃん……わたし、弱くなっちゃったのかな」
呟くような、なのはの言葉。意外なその言葉に、私は首を傾げた。
「そんな……なのははどんどん強くなってるよ。クロノたちだってびっくりするぐらい」
「えと、そうじゃなくて。……わたし、フェイトちゃんがいないと、不安で仕方なくなっちゃうの」
「…………」
「この間、フェイトちゃんが風邪でお休みしたよね? 学校に行ってる間、すごく不安だった……。フェイトちゃんがすぐ隣にいてくれないことが、すごく……寂しかった」
「なのは……」
「フェイトちゃんが側にいるのが当たり前になったら……フェイトちゃんがいないことが、すごく、怖くなったの」
声が、その身体が、小さく震える。その震えを止めたくて、私は少しだけ強くなのはを抱きしめた。
「……大丈夫、私はなのはの側にいるよ。いつまでも、ずっと、なのはから離れない」
「ん……ありがとう。フェイトちゃん」
顔を上げたなのはの微笑みは、だけどまだ、少し寂しげで。
「けど……やっぱり、今みたいに、いつでも一緒ではいられないよね。管理局のお仕事とかで、離れなきゃいけないことも、多くなるよね、きっと……」
――確かにその通りだ。私は執務官、なのはは武装局員。目指す方向が違うのだから、自然と離れる時間も多くなるだろう。
「あの頃のわたしなら、きっとそんなの平気だった。……けど、フェイトちゃんが側にいるようになって、フェイトちゃんのことを好きになればなるほど……離れてることが、平気じゃなくなってくの」
……それは、弱くなったってことだよね。なのはは呟く。私は、それに上手く答えられない。
なのはが、好きと言ってくれることは嬉しかった。けれど、そのせいでなのはが困っているのは……辛い。
どうすればいいんだろう。私は、なのはの悩みに……どうすることが、できるんだろう。
「なのは……私、」
頭の中で、答えは全然まとまらなかった。ただ……胸の中で震えるなのはに、言葉を届けたくて。
するりと、言葉は口をついてこぼれていた。
「……私も、なのはがいないときは、寂しいよ。すごく寂しくて……辛いよ」
風邪でお休みした日。ひとりの部屋は広すぎて、なのはの声が、笑顔が、どうしようもなく恋しかった。
「けど、なのはがいないことが、平気になっちゃうのが強さなら……私はそんな強さはいらないよ」
「フェイトちゃん……」
「私は、なのはを信じてるんだ」
なのはが顔を上げる。その頬に触れて、私は溢れるままに、言葉を続ける。
「会えない時間があっても……なのははきっと私を想ってくれてるって。そしてまたすぐに、なのはと会えるって。そしたら、会えなかった時間のことなんて、すぐに吹き飛んじゃうぐらい、幸せなんだって……」
目元に光る雫を、私は指先で拭う。ふたりでいる幸せな時間に、悲しい涙は似合わないから。
「だから頑張れるし、あの頃も頑張れたんだ。離れていたって、気持ちは一緒だって信じてたから」
「…………フェイト、ちゃん」
「なのはも……だから、私を信じて。私は離れてたって、なのはを想ってるから。いつだって、どこにいたって、なのはを好きでいるから」
……そう、だから、寂しがりは弱さじゃない。寂しい時間があるから、一緒にいる時間が嬉しい。寂しがる気持ちがあるから、会えたときに幸せでいられるように、頑張れる。
「どうしても寂しいときは、名前を呼んで。そしたら、きっと答えるから。念話の届かない距離にいたって……絶対に、答えるから」
「…………うん」
こくりと、なのはが頷く。そっと目を閉じたなのはの唇に、私は自分のそれを寄せた。
今度は、もうちょっと長く、お互いを感じていられる……優しいキス。
「……にゃはは、ダメダメだね、わたし」
唇が離れて、なのははばつが悪そうに舌をだして、自分の頭をぽかりと叩く。
「信じるよ。フェイトちゃんのこと……フェイトちゃんが、わたしを好きでいてくれてるって。だから頑張ってくれてるって」
「うん、負けないよ、なのは」
私が頷くと、なのははやっと、満面の笑顔になってくれた。それは私の大好きな笑顔。
「うんっ」
そう、これから先、どんな道を歩くことになっても、私はキミの側にいるから。
キミの隣を歩いていくよ。いつまでも、どこまでだって――
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