想いと想い
2009.09.25 Friday | category:投稿&頂き物SS
tanakaさんから、今回はなのはや。
「にゃはは……どうかな?」
「あ、ああ……凄く似合ってるで……なのはちゃん」
「ありがとう♪」
幼い頃から色々なあなたを見てきたけど、今日のは一味違うものがある。
「それにしても、何で急にそれを着ようと思ったん?」
私は彼女が着ている服を指差して聞く。
「え、えっと……」
なのはちゃんは指をもじもじとさせながら、言い淀む。
まぁ、普段では着るような事が無い服のウエディングドレスを着ているのだから、それなりの
理由があるんやろうけど、理由を言ってくれないと私かて意味が分からんやろ。
しかし、なのはちゃんは頬を赤く染めるだけで、何も言わない。そんな姿を可愛く思ってしまう
あたり、私はもうダメなのかもしれない。それだけでなく――
なのはちゃんのウエディングドレス姿は、それはもう見ているだけで何処かのお話の世界に
迷い込んでしまったのかと思ってしまうくらい似合っている。
そんな彼女が何故ウエディングドレスを着ているのかは分からないがその姿を見ると、いつか彼女も
アレを着る日が来るのだろと想像し、その見えない相手に嫉妬をしてしまう。
「は、はやてちゃんはこういうの嫌?」
「嫌なわけやないけど……」
なのはちゃんのそのドレスは誰のためのドレスなん?
誰を想ってそのドレスを着てるの?
そのドレスは、何のためのドレスなん?
「そういうのは、本当に見せたい人間に見せなアカンのと違う?」
私に見せてくれるのは嬉しい。でも、本当に見せたい人間のついでに見せられているというのは
少し悲しい部分もある。
本当は、私だけに見せて欲しい。
私が彼女の一番大切な人間になりたい。
だけど、私は彼女の一番にはなれない。
だって、あなたの側にはいつも彼女がいたから。
「まずは、私やなくてフェイトちゃんに見せなアカンやろ」
「え……?」
フェイトちゃんなら私より何か気の利いた事が言えるやろうし、彼女が一番なのはちゃんの
ウエディングドレス姿を期待しているかもしれない。
私かて期待してなかったわけやない。でもな……私になのはちゃんを幸せに出来る自信が無いんよ。
あの子を……リィンフォースを守る事が出来なかった私が――
「せやから、早く見せに行ってき」
フェイトちゃんになのはちゃんを譲るのは悔しいけど、フェイトちゃんならきっとなのはちゃんを
幸せに出来ると思うから。
「何でフェイトちゃんの名前が出てくるの……?」
「何でって、二人やったらきっと笑って祝福できると思うから」
一人になったら物凄く泣いてしまうだろうけど、皆の前でくらいは笑っていられると思うから。
「はやてちゃんは、わたしの事嫌いなの?」
「そ、そんな事無い! そんな事ないけど…………」
「わたしは、はやてちゃんにこの姿を見てもらいたかったの! 他の誰でも無い。はやてちゃんだけに
見て欲しかったの!」
「な、なのは……ちゃん?」
「ねぇ、何で好きな人に愛している人に見せちゃダメなの? わたしはただ、はやてちゃんに綺麗だねって
言って欲しかった! そして、今はまだ無理でもいつかこの服を着て、はやてちゃんと結婚式を挙げたいと
思っていただけなのに!」
なのはちゃんは、泣きながら自分の想いを口にする。
情けない事に私は、何も言う事が出来ずにただ彼女を見ている事しか出来なかった。
「ねぇ……はやてちゃんはわたしの事どう想っているの? わたしは、はやてちゃんの事大好きだよ。確かに
フェイトちゃんも好きだけど、それはお友達としての好きであって、はやてちゃんに対しては違うもん」
「わ、私は……」
私かて、なのはちゃんの事を世界で一番愛してると思ってる。せやけど、本当に私がなのはちゃんの隣を
一緒に歩き続けていいんか?
「はやてちゃんの本当の気持ちを聞かせて……」
「わ、私は――」
数年後――
「にゃはは……ど、どうかな?」
「はは……似合ってるで、なのはちゃん」
「ありがと♪」
あの時なのはちゃんが言った私と結婚したいという事。そして、私が想っていた彼女と一緒の道を……
隣を彼女と一緒に歩きたいという気持ちが重なり合って私達は本当に結婚をした。
結婚をする時は本当に色々あったけど、皆それなりに祝福をしてくれた。特にフェイトちゃんは悔し涙
を流していたけど、それでもちゃんと私達を心から祝福してくれていた。
今更ながらにこの時自分がどれだけ素敵な人達に恵まれていたのかを理解した。
「ところで、何でまたそれを着ようと思ったん?」
あの時と同じで、なのはちゃんはまたウエディングドレスを着ていた。
「何となく昔の事を思い出しちゃったからかな?」
「そっか……」
「ふふ……はやてちゃん。大好きだよ♪」
「ああ、私も――」
あの時は自分に自信が無くて、ハッキリと言えなかったけど、今ならちゃんと言える。
「世界で一番大好きやで」
自分の本当の気持ちを……
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