手を繋いで
2009.08.01 Saturday | category:投稿&頂き物SS
暑い夏にはアリすずだってtanakaさんが言ってた。
少し手を伸ばせば届く距離。
だけど、私にはその少しを行う勇気が無い。
だって、あなたに拒否されてしまったら私は――
「――か。すずか! 話聞いてる?」
「えっ!? な、何かな……?」
二人だけの帰り道。
なのはちゃんやフェイトちゃん、はやてちゃんも居ない二人だけの時間。
基本的にはアリサちゃんが会話の主導権を握っていて、私はアリサちゃんの言葉に耳を傾けている。
私からお話するのもいいけど、出来ればアリサちゃんのお話を聞いていたいかな。
だって、アリサちゃんの考えている事や想い、声を聞いていたいから。
でも最近はそれだけでは物足りないと思うようになってきた。
もっとアリサちゃんと居たい。もっとアリサちゃんの声を聞きたい。もっと――
――もっと、アリサちゃんと触れ合いたい。
だけど、アリサちゃんはそれを望んでいるの?
私の独りよがりの考えでアリサちゃんに嫌われたくない。
もしアリサちゃんに嫌われてしまったら……考えるだけでも恐怖で心がつぶれてしまいそうになる。
だから、少しでもその恐怖を取り除くために手を繋ぐくらいは……
「あ、あの……アリサちゃんっ!」
「なに?」
「あ、うん……やっぱり何でもない……」
「そう?」
やっぱりダメ!
手を繋いでもいいかなって言うだけなのに、ただそれだけなのに言う事が出来ない。
アリサちゃんは優しいから私が言えばきっと、呆れつつも手を繋いでくれると思う。
だけど、もし……もし、拒否されてしまったら……そんな考えが頭を過って動けない。
ねぇ……アリサちゃん。私は我儘なのかな?
アリサちゃんに触れていたい。でも怖くて言い出す事が出来ない。だけど触れていたい。
こんな事を思うのって、ただの我儘なのかな?
それに叶う事ならアリサちゃんの方から言ってきて欲しいなんて思うのは、我儘を通り越して図々しいよね。
全部が全部私の欲望なのに……ね。
ふふ……ほんと卑怯だね私……
こんな考えしか出来ない私なんて、アリサちゃんはきっと――
「す、すずか!」
「何かな? アリサちゃん……」
「ほらっ!」
「え……」
「え……じゃ、ないわよ! 早く!」
そう言って私の目の前にアリサちゃんの手が差し出される。
「アリサちゃん……」
「なによ? 文句でもあるの?」
「ううん」
ああ……やっぱりアリサちゃんは優しい。物凄く恥ずかしいくせに私のために色々してくれる。
そんなアリサちゃんだから私は――
「ふふ……アリサちゃん手温かいね」
「バカ言ってないで、早く帰るわよ」
「うん♪」
私はアリサちゃんが大好きなんだ……
二人だけの帰り道。頻繁では無いけど、わりとよくある光景。
だけど今回は少しだけ違う。
大好きな人と手を繋ぐことが出来たから。
こんな歪な感情を持っている私を優しく包み込んでくれるあなた。
そんなあなたが大好きだから、私も優しく出来る。
あなたのその温かい手のように……
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