少し歩幅が違う分
2006.11.22 Wednesday | category:なのはSS(アリサ×すずか)
昨日寝ようとしたら天啓のように妄想が降って湧いて、そのまま勢いで書いてしまいました。
アリサ×すずか極甘第3弾。最近は比較的長めの短編を中心に書いてましたが、今回は久々の完全ワンシチュエーション超短編。ネタ元は1期SS01のアリサとすずかのキャラソンです。あの2曲、さりげに歌詞がリンクしててアリサとすずかのラブラブソングになってるんですよ! と強行に主張してみる!
ということで1期SS01をお持ちの方は「きっとStand by you」をBGMにどうぞ(・∀・)
アリサ×すずか極甘第3弾。最近は比較的長めの短編を中心に書いてましたが、今回は久々の完全ワンシチュエーション超短編。ネタ元は1期SS01のアリサとすずかのキャラソンです。あの2曲、さりげに歌詞がリンクしててアリサとすずかのラブラブソングになってるんですよ! と強行に主張してみる!
ということで1期SS01をお持ちの方は「きっとStand by you」をBGMにどうぞ(・∀・)
並んだふたつの足音は、どうも少しだけ不揃いだ。
だんだん遅れていく時計の秒針みたいに、ほんのちょっとずれた足並み。
その差が少し開いては、慌てたように少し小走り。
そんなことを、さっきからすずかはずっと繰り返していた。
「……あのさ、すずか」
「ん? なに、アリサちゃん」
「あたし、歩くの速い?」
立ち止まって、そんなことを訊ねてみる。すずかは少し首を傾げて、「そんなことないと思うよ」と答えた。
「でも、さっきから何だか遅れてるじゃない」
「それは……アリサちゃんの足が長いからじゃないかな」
言われて、あたしは自分の足とすずかの足を見比べる。……って、制服のスカートの上からじゃ解るはずもないか。
でも、あたしとすずかの身長はほとんど変わらないんだから、足だってそんなに変わらないと思うけど……。
「それにね、アリサちゃんが少し先を歩いてるのって、いつもだよ?」
「え? ……そだっけ?」
「うん。アリサちゃんの一歩後ろが、私の定位置」
……そうだったかな。そうだったかもしれない。
言われてみれば、そんな気がする。あたしとすずかと、なのはと3人でいたときは、特に。
あたしとなのはが並んでて、すずかは一歩後ろからついてきてる……そんな感じ。
それが当たり前だと思っていて、特に気にしたこともなかった。
すずかの歩く速度なんて……ほとんど、気にしたこともなかった。
「…………」
あたしはくるりと踵を返す。そして……左手を、すずかに向けて差し出した。
「アリサちゃん?」
すずかの声。ああもう、察しなさいよ。……それとも解っててやってるのかな。うう。
「……手、繋げば、遅れないでしょ」
たったそれだけを言うのがひどく気恥ずかしくて、顔が熱くなるのを感じる。
顔が赤いのが、夕焼けで誤魔化せていればいいんだけど。
「……いいの?」
「聞き返さないっ。……恥ずかしいんだから」
振り向かずにあたしがそう答えると、すずかは。
「……うんっ」
そう言って、ぎゅっとあたしの手を握った。
触れたすずかの手のひらはすべすべで、マシュマロみたいに柔らかくて……とても、あったかい。
絡まった指先が、ちょっとだけくすぐったくて。
そこに確かに、すずかがいるという感触がある。
――あああっ、メチャクチャ恥ずかしいっ。
でも、悪い気分かっていうと、そんなこともなくて。
むしろ……すごく幸せな気分で。
てゆか、なんで手を繋いだぐらいでこんなにドキドキしてるんだろう、あたし。
今までだって、手を繋いだことぐらいあるのに。
……キスだってもう何回もしてるのに。
それなのに、鼓動が早くて、顔が熱くて。
「ほら、行こっ」
そのことをごまかすみたいに、あたしはすずかの手を引いて歩き出す。
慌ててついてくるすずかの足音は、やっぱりちょっと不揃いだったけど。
――その肩は、今度はずっと、隣にあった。
触れるか触れないかぐらいの、ささやかな肩の距離と。
ぎゅっと握りしめた手の、触れあったゼロの距離。
それは夕焼けの穏やかさみたいに……あったかい距離だった。
「……アリサちゃん」
「ん?」
隣から、すずかの優しい声。まだ顔が熱かったから、あたしは振り返らない。
「これからもずっと……アリサちゃんの隣を歩いていいかな?」
「――――何よ、いきなり」
思わず振り向いたあたしに、すずかはにっこりと微笑んだ。
その笑顔が、夕焼けに照らされて眩しくて。
「少し歩幅が違う分だけ、私が遅れて歩いてても……アリサちゃん、私の手、引いてくれる?」
そんな問いかけは、今更と言えば今更だけど。
言葉にして欲しいこととか、言葉にしたいこととか……そんな感じのものが詰まってる。
「……手が届く距離にいたらね」
だから、あたしはぶっきらぼうにそう答えるのだ。
言葉にしなくても伝わってることを、改めて言葉にするのは気恥ずかしいから。
……けどその気恥ずかしさも、なんだか甘くて、ふわふわした気分。
「うんっ」
頷いて、すずかはきゅっと、強くあたしの手を握る。
だからあたしも、ほんの少しだけ強く握り返した。
そう、これからもずっと。
流れていく日々の中で、少しずつ色んなことが変わっていくのだろうけど。
だけど、この距離は変わらないように、一緒に歩こう。
少し歩幅が違う分は、繋いだ手でごまかして。
――大好きな人の、隣にいられるように。
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すけひろゆう氏がこの話のイラストを描いてくれました〜♪
ありがとうございます〜。
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