暗闇の中で
2009.06.24 Wednesday | category:投稿&頂き物SS
tanakaさんよりまたまたアリすず。洗脳完了ウフフ。
今日すずかの家でまったりとしている時に事件は起きた。
いや、事件と言ってもただ単に停電しただけなんだけど、その時の事を思い出すと、今でも恥ずかしくなる。
今からその時の状況を説明するわけだけど……あ〜何であたしがこんな事をしないといけないのよ?
まぁ、いいわ。ちゃんと説明はするけど、この話を聞いてもあたしの事をヘタレとか言わないでよ!
そんな事自分でも理解してるんだから、ここで余計に言われたらヘコむわよ。
じゃ、話すわよ――
「きゃっ!?」
「な、何?」
すずかの家でいつものようにくつろいでいた時、急に部屋の明かりが消えたのよ。
初めは驚いたけど、すぐに停電だと分かったあたしは、比較的落ち着いていたんだけど、すずかが……
「く、暗いよ? アリサちゃん何処にいるの?」
すずかが迷子になった子供のような声をあげるもんだから、あたしも油断したっていうか――
「ほら、此処にいるわよ」
抱き締めるようにすずかを引きよせたのよ。
そうするとほら、すずかの匂いがあたしの鼻をくすぐるわけで――
ああ……バカな事をしてしまったと反省すると同時に、
停電くらいで怖がって、ほんとすずかは可愛いわねとか思いつつ、すずかってこんなにもいい匂いがするんだと思ったりで……
でも――
「……アリサちゃん……?」
「何……?」
心配そうにあたしの名前を呼ばれたら、いくらもっと匂いを嗅いでいたいと思っても自重するわ。
「何処にも行かないでよ?」
今にも泣きそうな……いや、半分泣いてたような……まぁ、そんな感じで強くあたしの服を掴む。
その姿が完全に迷子の子供に見えてしまい――
「……ぷっ」
それが、とても可笑しくて、
「あはははっ♪」
失礼だとは思いつつも、笑ってしまっていた。
「あ、アリサちゃん……?」
「あ〜ごめん、ごめん。何だか面白くて」
「面白い……?」
すずかは、何が何だか分からないといった表情で首を傾げる。
そりゃ、急に笑いだしても何が面白いか分からないわよね。
少しだけ考えたけど、何が面白かったのかを説明する。説明したら絶対怒るとは思っていたけど、それですずかの恐怖心が少しでも
和らぐのなら、それでいいと思ったから。
すずかの心が少しでも軽くなるのなら、あたしは敢えて怒られよう。
「今のすずかが、まるで迷子の子供に見えて、それが何だか可笑しくてね」
「ま、迷子の子供って――」
説明を聞いたすずかは、予想通りぷるぷると震えながら顔を赤くしている。
「あ、アリサちゃんっ!」
「ふふ……冗談よ、冗談」
本当は冗談じゃなくて本気なんだけど、本気ですずかが怒って、嫌われるのは嫌だからね。
「もーっ! 変な事言わないでよ」
「悪かったわよ」
でも、これで一応恐怖心は薄れたでしょ? だったら、それでいいわ。
そんな風にしていると停電も復旧し、部屋に明かりが灯る。
「やっと明るくなったわね」
「そうみたいだね……」
部屋も明るくなりすずかにも大分余裕が出てきたようだ。
そして変に余裕が出てくると、今の自分達の状況が気になりだす。
「え、えっと……」
「あ、あははははは……」
互いに抱き合っている状況それはとても恥ずかしくて、慌てるように離れる。
「ご、ごめ――っ」
「う、うん。大丈夫だよ?」
「そ、そそそ、そうかしら?」
テンパって言葉がしどろもどろになってしまう。
気がついた時は恥ずかしかったけど、いざ離れてしまうとその行為も惜しく思ってしまう。
「あ、ああ、あたしもう帰るわ」
「あ……うん」
それでも抱き締めたという行為が消えるわけではなく、気持ちの面では恥ずかしくもある。
だから逃げるように帰ってしまった。
あえて言わせてもらうけど、これはヘタレなんかじゃないんだからね。
まぁ、これが今回の事の顛末なんだけど、ほんと何で抱き締めるなんて行為をしたのかしらね。自分でも分からないわ。
でも、一つだけ言えるならすずかの匂いはとてもよくて、今でも忘れられないという事よ。
アリサが帰った後の月村邸にて――
「すずか今日はどうだった?」
「あ、お姉ちゃん。うん……とてもよかったよ。そういうお姉ちゃんは?」
「私もよかったわよ」
「「ほんと――」」
「「わざと停電させた甲斐があったわね」」
停電という事故。実はそれは月村姉妹によって引き起こされた罠なのであった。
その停電という罠によって、すずかはアリサと、忍は恭也と暗闇の中で二人だけの空間を楽しむ事が出来たのだった。
もちろん、アリサはその事をしらない。もちろん恭也も。
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