スキー大好き! って大好きななのはが言ったのでつい私も好きだし得意だと言ってしまいました。
2009.02.22 Sunday | category:投稿&頂き物SS
「フェイトちゃーん! はやてちゃーん!」
こちらに手を振りながら真っ白な坂をすいすいと滑り降りてくる、なのは……カッコいい。
……本当は、私がそれをやりたかったのに。そしてなのはにはここに座って見守る役であってほしかったのに。願望とは、全く逆の配置となってしまった。
なのはがこの席でお茶をすすりながら、雪山の方をうっとり眺めてて。その見つめる先には、インストラクター顔負けの滑りを見せる私がいて、そのままなのはのそばまでやってきた私は、頬を赤らめたままのなのはに微笑んで、そして、
「フェイトちゃんてば!」
「え――な、なのはっ?」
急に間近で聞こえた大好きな声に、どきりとした。反射的に口を拭ってしまった。
……あぁ、良かった。何も、垂れてない。
「どうしたの? やっぱりまだ具合悪いの?」
「え、えと……うん」
後ろめたい思いが視線をなのはから外そうとする。
なのはのその目で覗かれると、目を合わせてなくても全て、見透かされてしまいそうだ。
「ここにいて大丈夫なの? ホテルに戻らなくて平気?」
胸が痛む。その、不安げな顔を向けられると。
「うん、大したことないから」
そう。本当に、大したこと、ないんだ。だって体はすこぶる元気なのだから。
胸は痛いし動悸は激しいけれど、それらは全て自分がついた嘘が生んだ代償だ。
「そっか。何かあったらすぐ呼んでね?」
にこっと微笑んで、なのはが再び坂を上っていく。何度も心配そうにこちらを振り返りながら。
それでますます、辛くなった。
「残念やねぇ、フェイトちゃん。せっかくの旅行が台無しになってしもて」
ハッとした。はやてが隣に座っていたんだった!
意味深に微笑むはやてに、精一杯の作り笑顔で応対する。
「そうだね……でもこうしてなのはの楽しんでるところが見られるだけでも十分嬉しいよ」
「ふぅーん。そっかそっか」
どこか含みのある、はやての態度。
まさか……まさか、嘘ついてることがバレてるわけじゃ……。
「なぁ、フェイトちゃん」
「な、なぁに、はやて」
「ずばり訊くけど」
ますます、動悸が激しい。本当に具合が悪くなりそうだ。
「ほんとは体調悪いんやなくて、単に滑れんのとちゃう?」
うなだれるしかなかった。やっぱり私は、嘘をつくのが、下手だ。
「…………うん」
こっそり内緒で、リンディ母さん達と練習してたのに。わざわざ雪山まで行って特訓したのに。結局上達には程遠く。
悩んだ末にたどりついた秘策が…………仮病。
「やっぱりなー。幸いなのはちゃんは全く気づいてないみたいやけど」
「アリサ達も、かな?」
アリサとすずかのスノーボード組はなのはと別行動。雪山のはるか上の方へ行ってしまった。
普段体育の授業で行うようなスポーツなら、二人とだって競えるほどなのに。
どうして、どうしてよりによって、なのはの好きなスキーに限って、私は……。
「まぁ、それだけ辛そうな顔してれば普通に誤解するかもなぁ」
「はやてはどうして解ったの?」
「そりゃまあ、いつものフェイトちゃんなら体調悪いくらいでなのはちゃんから離れたりしないやろ?」
「あぅ」
確かに。いつもの私ならきっと無理してでも滑ろうとするだろう。だってなのはと一緒にいる時間は特別なのだから。
一緒にいると具合の悪さなんていつの間にかどこかへと吹き飛んでしまう。なのはの『魔法』のおかげで。
「なのはちゃんに教えてもらえばええのに。きっとなのはちゃんも喜ぶよ?」
「……そうかな」
「そうやって」
「がっかりしないかな」
「何で?」
「私が滑れないって知って」
言うなり、はやてが明後日の方角を見やって盛大に白い息をついた。
もう見慣れた仕草だ。また呆れられてしまったらしい。
「フェイトちゃんはなのはちゃんが滑れなかったらがっかりするの?」
「ううん」
「じゃ、どう思う?」
「……可愛い」
率直に思い浮かんだ単語を口にしたら、はやてが今度は疲れたように肩をすくめた。
もう私も、苦笑するしかない。何を言ってもはやての機嫌を損ねる以外なさそうだ。
「アリサちゃんやったら、どついてるとこやろな」
「はやて。ちょっと行ってくるから」
なのはの元に。そして告白しよう。
好きだ――もとい、滑れないから、滑り方を教えてほしいって。
高鳴る胸に手をやって、一歩ずつ、少しずつ、なのはへと近づいていった。
♪ ♪ ♪
「あれ? フェイトちゃん、大丈夫なの?」
「……なのは」
「うん?」
「えと。わ、私」
言うんだ。本当は滑れないんだって。嘘ついてて、ごめんって。
たったそれだけでいいんだ。簡単じゃないか。白状して、楽になろう。
「まだ、お腹の調子が悪くて……でも、なのはと滑りたいなって。だから……」
…………あぁ、私はどこまで……。
ついさっき、正直に告白しようって決めたばかりじゃないか。どうしてなのはの前だと嘘ばかりついてしまうのだろう。なのはの前だとどうして、上手くいかないのだろう。
「あはは。じゃあ、一緒に滑ろう?」
「うん」
手を引かれて、トボトボとリフトに乗り込んだ。
どうにかして滑らずに済む妙案はないものか。雨でも降ってくれればいいのに。
そんなことを未だに考え続ける自分にまた落ち込んだ。
無慈悲なリフトはものの数十秒しか私に時間を与えてはくれない。ついにこの時が来てしまった。
うぅ……坂、意外と急だ。ちょっとした打ち身じゃ済まないかもしれない。
あぁ、もう後には退けない。滑りだしたら止まることもできない。どこかに衝突して、なのはに幻滅されて、それで我慢できずに泣き出して、そして、
「……え? なの、は?」
首にかかったあたたかい吐息で、なのはの思いがけない行動に気づいた。向き合う体勢でぴったり、密着していた。
「えへへ。言ったでしょ、一緒にって」
パチッと、いつの間に覚えたのだろう、ウインクを投げてくる、なのは。
その表情に、ハッとした。
「もしかして……なのは」
「フェイトちゃん、ほんとは滑れないんでしょう?」
頭の中が真っ白になった。雪さながらに。
バレてた? 最初から?
「ど、どうして……」
「うーん。何となく、いつもと違うなぁって」
「……」
「フェイトちゃん、強がりさんだから」
……そうだ。忘れてた。なのはは私の一番の理解者だってことを。
面目なくて目も合わせられない。それに比べて、私は……。
「じゃあ、行くよ。最初はゆっくりだから緊張しないで」
「……ん」
なのはが足の位置をずらすと、自然とそれに合わせて私も緩やかに坂を下り始めた。なのはの顔が、近い。
こうして身を任せていれば滑る感覚というのがよく解る。やっぱりなのはは教え上手だ。緊張するどころかそれを優しい声音と笑顔で解きほぐしてくれる。
きっと今の私のような気持ちを抱く後輩がたくさん出てくるんだろうな……嬉しいけど、ちょっとだけ、寂しい。
なのはを独占できないことくらい、ずっと前から解ってはいたけれど。
「恥ずかしいかもしれないけど、我慢してね」
「なのは」
「うん?」
「……ごめん」
「あはは、謝るようなことじゃないでしょ。みんな最初は滑れないんだから」
「そうじゃなくて。えと、嘘ついちゃったから」
「ふぇ? 具合悪いって?」
「うん」
嘘をついたことに違いはない。
嫌われても仕方ないけれど。ひょっとしたらなのはは許してくれるかもしれないけれど。
ここできちんと謝れないようでは、きっとこれからなのはとは対等でいられない。
「……にゃは。次、嘘ついたらお仕置きしちゃおうかなぁ」
「どんな?」
なのはがその大きな目をまん丸にして、それから俯きがちに悩みだした。
そんな仕草もまた可愛くて、間近で見守る私は誰より幸せだ。
「う〜ん……フェイトちゃんがひぃひぃしちゃう、みたいな?」
「…………」
「今えっちな想像したでしょ」
にや〜っと意地悪な笑みを向けられて、顔がカーッと熱くなった。
「そ、そんなこと――あ!」
「ふぇ――にゃあっ!!」
鈍い音がして間もなく視界が回って、どさどさと何かが――雪の塊が上からのしかかってきて。
首を振って見渡すと、すでに私たちはコースを外れていて。
立派な大木に突っ込んでしまったらしい……ゆっくり滑っていたのが不幸中の幸いだ。
「な、なのは」
「うぅ〜……失敗…………ぁ」
「あぅ」
あぁ、思いもよらない展開だ。
なのはが下、私が上。こんな状況、心の準備ができてない。
「ふぇ、フェイトちゃん……その」
居心地悪そうになのはがもぞもぞとうごめく。けど体を起こすことはできない。
だって私が覆いかぶさっているのだから。
「ど……どいて、ほしい……な」
「ごめん。い、板が、邪魔だから……」
厳密に言うと私の板がなのはのそれを押さえつけているのだけれど。残念なことに、今私の両足は動くことを拒否してしまっている。
「うぅ〜……動けないよぉ」
「なのは……雪、ついてる」
「ふぇ? ――にゃっ」
その鼻先にくっついた『不届きもの』をぺろり。続いておでこもぺろり。
「だ、だめだよフェイトちゃん……こんな所で、ひゃっ」
なのはが悪いんじゃないか。ダメと言いつつ表情は拒むどころか楽しんでいるようにさえ見える。
そんな様子で嫌がられたって、放すもんか。
「雪、もう取れたよぉ」
「取れてないよ」
……まあ、雪の粒が全部消えたところで返事は変わらないのだけれど。
「くすぐったいもん!」
「我慢して」
「うぅ〜……ぁ」
弱々しく視線を逸らして、そのまま硬直する、なのは。どうしたんだろう。
「なのは? ――」
なのはが見つめる、真横をちらりと覗くと、そこには。
「何してるの。バカップル」
あぁ、甘い時間は、あっという間だ。
陽を背にしてその姿はよく見えないけれど、仁王立ちがここまで様になる人物は彼女以外に考えられない。
なのはと目が合って、なのはが観念したように舌を出して、そしてアリサに向かってはにかんだ。
「……イチャイチャ」
「他所でやりなさい」
その、強烈な蹴りは私たちでなく木に向かって放たれて。
身構える間もなく再び、私たちは大量の雪に埋もれた。
Comment
相変わらずこの・・・バカップルめっ!!私も彼女とラブラブしたい!(いないけど・・・ なのはさんひぃひぃって一体!? あ、やべ鼻血が
Posted by: |at: 2009/02/24 5:59 PM
新作ゴチになります(微妙に違う?)
しかしバカップルは例え雪山に行ってもアツアツですな。うん。善哉善哉。
所でなのはさん?「フェイトちゃんがひぃひぃしちゃう」って?まぁ貴女がフェイトちゃん限定にすることなんざみんなすでに知ってますから!残念!(←SLB)
所でアリサさん。「バニングス・キック」の使い方、慣れてきましたね(激違)
取り敢えず夜は温泉の露天で(検閲済)な事が待ってるわけですな?わかりますっ!
しかしバカップルは例え雪山に行ってもアツアツですな。うん。善哉善哉。
所でなのはさん?「フェイトちゃんがひぃひぃしちゃう」って?まぁ貴女がフェイトちゃん限定にすることなんざみんなすでに知ってますから!残念!(←SLB)
所でアリサさん。「バニングス・キック」の使い方、慣れてきましたね(激違)
取り敢えず夜は温泉の露天で(検閲済)な事が待ってるわけですな?わかりますっ!
Posted by: LNF |at: 2009/02/24 10:58 PM
mattioさんのSSは、いつも僕に『甘さ』のなんたるかを啓蒙してくれる。
でも、今回の話は違った。なぜか僕の笑いのツボを刺激した。
特に『悩んだ末にたどりついた秘策が……仮病』て、ところで大笑してしまった。
仮病って……秘策でも何でもないじゃん。
あとはアリサの『バニングス・キック』ですかね。
今度は木なんかじゃなく、僕の尻を蹴ってほしいものです。
でも、今回の話は違った。なぜか僕の笑いのツボを刺激した。
特に『悩んだ末にたどりついた秘策が……仮病』て、ところで大笑してしまった。
仮病って……秘策でも何でもないじゃん。
あとはアリサの『バニングス・キック』ですかね。
今度は木なんかじゃなく、僕の尻を蹴ってほしいものです。
Posted by: イヒダリ彰人 |at: 2009/02/26 2:21 AM
>名無しさん
バカップル要素以外の要素は他所の書き手様方にお任せすると大分前に決意しましたので(ぇ
>ひぃひぃ
ベッド上での力関係は言わずもがな(マテ
>LNFさん
もうバカップル以外書けませんどうしましょう(ry
>ひぃひぃ
なのはさん誘い受け→フェイトさんつられ攻め→いつのまにかなのはさん攻め
これがなのフェイのデフォだと永遠に主張し続けます(ぉ
>イヒダリ彰人さん
う〜ん、やっぱり鬱ってる時に無理して書いてもダメですねぇ(苦笑)。
大分前から解ってはいるんですがずっと書いてないとそれはそれでストレス溜まってしまいますので、こんな時もあります、ゴメンナサイ。
>僕の尻を〜
誰しも同意見だと思います(ぇー
バカップル要素以外の要素は他所の書き手様方にお任せすると大分前に決意しましたので(ぇ
>ひぃひぃ
ベッド上での力関係は言わずもがな(マテ
>LNFさん
もうバカップル以外書けませんどうしましょう(ry
>ひぃひぃ
なのはさん誘い受け→フェイトさんつられ攻め→いつのまにかなのはさん攻め
これがなのフェイのデフォだと永遠に主張し続けます(ぉ
>イヒダリ彰人さん
う〜ん、やっぱり鬱ってる時に無理して書いてもダメですねぇ(苦笑)。
大分前から解ってはいるんですがずっと書いてないとそれはそれでストレス溜まってしまいますので、こんな時もあります、ゴメンナサイ。
>僕の尻を〜
誰しも同意見だと思います(ぇー
Posted by: mattio |at: 2009/02/27 7:14 PM
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