にと×ひな! Stage3「神々も恋せよ幻想の片隅で」 SIDE:B(前編)
2008.10.18 Saturday | category:東方SS(にとり×雛)
今日も妹は、鏡に向かって熱心に身だしなみを整えていた。
いつもの香水、派手な色のネイル。念入りにメイクを決めて、帽子を被って。
その姿はいつだって、よそ行きの姿。自分ではない誰かに向けられた姿――。
「なに? お姉ちゃん」
不意に、こちらの視線に気付いたか、妹――穣子は眉を寄せて振り向いた。
「……どこか、出かけるの?」
静葉にできるのは、そんな答えの解りきった問いかけだけ。
「人間の里。今日もお呼ばれしたの」
表情を隠すように帽子を被り直し、穣子はぞんざいにそう言い放った。
「収穫の季節ももうすぐだからね」
「……そう」
それ以上何を言えるわけでもなく、静葉はただ頷くしかできない。
言いたいことも言えない自分に、一番苛立っているのは自分自身なのに。
「お姉ちゃんと違って、私は人の役に立つ神様ですから。じゃあね」
いつもの憎まれ口。つん、と視線を逸らして、穣子は手を振り歩き出す。
その背中を見つめて、何とか絞り出そうとした言葉は、やっぱり声にならなかった。
「……行ってらっしゃい」
呟くような言葉は、ドアを閉める音に紛れて、きっと穣子には届かなかった。
――まるで自分の気持ちのように、妹との間は厚い壁に隔てられて。
本当は、行かないで、と言いたいのに。
自分の気持ちすら口にできないから、たったひとりの妹にすら嫌われて。
いっそ自分も、穣子のことが嫌いになれたら、どんなに楽だっただろう――。
「……穣子の、ばか」
小さく呟いた言葉は、淀んだ家の中の空気に溶けて消えていく。
◇
ときどき、不安になることがある。
それは、大切な友達のこと。初めてできた友達の、厄神様のことだ。
河童の自分と、厄神様。そもそも種族が違うから、好きなものも常識さえも、噛み合わないことばっかりだ。
自分の好きな機械いじりのことは、厄神様には難しい話だと思うし。
厄神様のつとめのことは、自分にはよく解らない世界。
――そんなふたりだから、互いに何の話をしているのか解らなくなることがある。
そんなときは、笑って誤魔化したりしているのだけれど。
そのたびに、どうしようもなく不安になるのだ。
自分は、雛を退屈させてしまってはいないだろうか、と。
好みも常識も違う自分といる時間を、雛は本当に楽しんでくれているのだろうか――と。
「ねえ、雛……雛?」
ふとまた、目の前で雛がぼんやりしているのに気付き、にとりは声をあげた。
どこか遠い視線。それはこちらに向けられているけれど、自分を見ていない。
「どうしたの? ぼーっとして」
首を傾げてみせれば、雛ははっと我に返ったように目をしばたたかせた。
「……あ、ごめんなさい。なんでもないわ」
苦笑いして、雛は小さく首を振った。にとりは軽く鼻を鳴らす。
別に、雛がぼーっとしていたからって怒る気は無かった。それよりもにとりには――雛がぼんやり別のことを考えるぐらい、退屈してしまっているのではないかと。そっちの方が問題だった。
視線を落とす。テーブルに置いたのは新しく作ったトランシーバー。これがどういうものなのか、というのを話していたのだけど――やっぱり、そういう話は雛には退屈なのかもしれない。機械いじりは河童の専売特許でしかないのだ。
かと言って、にとりには雛のファッションのこととか、雛の仕事のこととかはよく解らないから、そっちの話をすることも出来ない。――だから結局、自分のテリトリーの話をするしかなくて。
「それでね、今回のは通信距離が前よりもだいぶ広くなって――」
自分の好きなことについて話すのが楽しくないはずはない。けれど、それを雛が楽しめていないなら――自分のしていることはどこまでも滑稽な空回りでしかなく、会話は一方通行にしかなりはしないのだ。
雛はそんな自分の話に付き合ってくれるけれど。
それが、ただ「友達だから」でしかなくて。
無理に合わせてくれているのなら――そっちの方が、にとりには辛いのだ。
「最終的にはやっぱり幻想郷全体、いやむしろ外の世界とも……」
言いかけて、不意にまた雛の意識がこちらから逸れていることに気付いて、にとりの言葉はしぼんでしまった。――目の前でこちらを向いて、だけど別の考え事に意識を沈めた雛。その姿は、どこまでも自分の話が退屈でしかない証拠だ。
「……雛」
「なあに?」
「やっぱり……面白くないかな。雛には、こういう話」
俯いて、にとりは気付けばそう口走っていた。
どんな答えが欲しいというのだろう。そんなことはない、と言ってほしいのか。それがただの取り繕いでしかないと解っているのに。なら、退屈だと正直に答えてほしいのか。そう答えられたら――どうすればいいのだ。
そして雛は、小さく息を飲んで、言葉に詰まったような様子を見せて。
結局のところ、その反応が全てだった。
「――そんな、こと」
「じゃあ……雛。今まで私が説明したこと、解った?」
「それ、は――」
口ごもる雛。ああ、そんなことは解っている。雛に解らない話ばかりしてしまっていることぐらい、解っているのだ。
「……そうだよね。雛には解らないよね。私みたいな技術屋とは違うんだもんね。それなのに私、全然、雛には面白くない話ばっかりして――」
「にとり、」
「ごめんね、退屈だよね、――私、今日はもう帰るね」
立ち上がり、背を向ける。最低だ、と自分自身を心の奥底で罵倒しながら。まるで雛が悪いみたいな言い方。雛は悪くないのに。雛の好きなことの話ができない自分が悪いだけなのに。ひとりで舞い上がって、ひとりで怒って、雛を困らせて――ああ、本当に、最低だ。
「……じゃあね、雛」
マイナス方向に転がりだした思考は止まることなく、それ以上雛の顔も見られなくて、にとりは飛び出すように雛の家を出た。――雛は、呼び止めてはくれなかった。
呼び止めてほしかったのだと、思う。
どうして呼び止めてくれないのかと、雛に怒っている自分と。
そんな自分をバカでマヌケでどうしようもないと嫌悪する自分がいる。
「……バカ、自分のバカ」
風にざわめく木々の幹に顔を押しつけて、にとりは呻いた。
トランシーバーを雛の家に忘れてきたことに気付くのには、もう少し時間が必要だった。
◇
秋静葉にとって、妹はいつだって眩しい存在だった。
終焉と静寂の象徴である静葉と、豊かさと実りの象徴である穣子。
誰かに求められる存在、必要とされる存在は、妹の方で。
紅葉はその美しさで人の目を楽しませても、所詮それは刹那のことに過ぎない。
生きる糧と、次の実りをもたらす穣子が、眩い秋の陽光の輝きなら。
舞い落ちて腐り土に還る紅葉の自分は、夜の暗闇の、雲間に隠れた朧月。
陽光と月光が同じ空に共存できないように、妹とはいつまでもすれ違い続ける。
一番伝えたい気持ちさえ、言葉に出すことも出来ないまま。
森もまだ、紅葉の季節には少し早い。
晩夏の陽射しに青々とざわめく木々を見上げて、静葉はぼんやりと息を吐き出した。
もうすぐ秋だというのに、心がちっとも沸き立たない。
その理由なんて、どうしようもないほど明らかだった。
「……穣子」
いつものように憎まれ口と一緒に、家を出て行く妹の背中が瞼に浮かぶ。
今頃は人間の里に着いて、豊穣を約束し、人間たちにもてはやされているのだろうか。
よそ行きのメイクと服装で、他人の目を惹きつけて――
自分ではない誰かのために、妹は笑っている。
ただそれだけのことが、静葉にはひどく重いのだった。
みっともない嫉妬だということぐらい自覚している。口下手な自分と、明るく快活な穣子。そんなありふれすぎたコンプレックスの形。
だけど羨んでいるのは、穣子ではなく。
――穣子の笑顔を向けてもらえる、自分の知らない誰かのことで。
「みのりこ、」
名前を呼んでも、穣子は自分に笑いかけてはくれない。怒っているか呆れているかのどちらかで。……いつだって、気持ちは一方通行のままだ。
結局のところ、静葉は穣子のことが好きなのだ。
それはおおよそ一般的な、姉妹同士の気持ちよりも、もう少し強く。
端的に言えば――彼女はたったひとりの妹に、恋をしていた。
それだけの話である。
昔は、こうではなかった気がする。
『お姉ちゃん』と、穣子が笑いかけてくれていた。手を繋いで歩いた。そんな時間が確かにあったはずだったのに。……いつから、こうなってしまったのだったか。
解らない.確かなことはただ、今の自分が穣子に嫌われているということだけ。
そしてすれ違ったまま、これからもずっとこのままで――
さく、と草を踏みしめる音がして、静葉は振り返る。
穣子が自分を探しに来てくれたのではないかという、あり得ない期待を少しだけしながら。
そしてやっぱり、その期待は裏切られるだけだ。
「……およ」
こちらを見つめてきょとんと目を見開いたのは、穣子とは似ても似つかない少女。
蒼い髪に緑の帽子、作業着風のスカートと背負ったリュックは、河童特有のいでたちだ。
「……え、ええと、こ、こんにちは?」
なぜか首を傾げながら,河童の少女は疑問系でそう声をあげた。
「何見てるの?」
不思議そうに尋ねられ、静葉はまた河童の少女の方を振り向く。首を傾げた少女に、静葉はひとつ息をついて、「……紅葉」とだけ答えた。
「紅葉?」
河童の少女は首を捻る。それはそうだろう。見上げる木々はまだ青々として、紅葉の気配は遠い。その姿に色付く秋の姿を重ねて見ることができるのは、静葉が紅葉の神だからだ。もちろん、まだその季節でない以上、無理に紅葉させるようなことはしない。何事も、あるがままが最も自然であるべき姿なのだから。
――お姉ちゃん、ほら、あの樹も綺麗よね。
それはいつのことだったろう。穣子とまだ仲が良かった頃、焼き芋を食べながらふたりで紅葉を眺めていた。いったいどちらが、自分たちのあるがままの姿なのだろう? 昔と今と、どちらが本当の――
――お姉ちゃんの馬鹿、大っキライ!
蘇る妹の声。ああ……どいして喧嘩したのだろう。思い出せない。たった一度の何かで、それまでの全てが幻だったみたいに消えてしまって。
もう、穣子が最後に笑ってくれたのがいつだったのかさえ、思い出せないのだ――。
「――――あれ?」
気が付けば、自分の頬が濡れていた。雨ではない。……いつの間にか泣いていたのだということに、静葉はしばらく気付けなかった。
「ど、どうしたの? だいじょぶ?」
心配げに声をあげる河童の少女。静葉は首を振って涙を拭おうとしたけれど、どうしてか雫は止まらず。
静葉はそのまましばらく、声もなく静かに泣き続けていた。
そんな静葉の傍らで、河童の少女はおろおろしながらも、立ち去ることなく静葉が泣きやむのを、そのままじっと待っていた。
◇
雛の家には戻るに戻れず、かといって里に帰る気にもなれず。
あてもなく森の中をうろうろしていたにとりが出くわしたのは、赤いスカートの少女だった。
紅葉の彩りにグラデーションするワンピースと、落ち葉色の髪に飾られた赤い髪飾り。佇む気配は人間のものではない。おそらく八百万の神様だ。秋にまつわる神様なのだろう。
「……え、ええと、こ、こんにちは?」
少女に振り向かれて、にとりは困ってそんなことを口走っていた。少女はきょとんと首を傾げると、消え入りそうな声で「……こんにちは」とだけ答えだ。
それ以上、少女はにとりに興味無さそうな様子で、空を見上げだす。何かあるのかと思ってにとりも視線を追ってみたけれど、ただ木々の梢がざわめいているだけだった。
――以前のにとりなら。そこで終わりだったろう。そのまま少女の元を立ち去って、それで終わり。森の中に佇む神様に、特別興味を覚えもしなかったはずだ。
だけども今、にとりは少女の横顔をぼんやりと見つめていた。
似ている気がしたのだ。……少女の横顔が、いつかの雛に。
それは出会った頃の、ひとりでどこか遠くを見つめていた雛の、寂しげな横顔。
雛とは似ても似つかないのに、にとりには少女の姿が雛と被って見えて。
「……?」
にとりの視線に気付いたか、少女が再び振り返る。にとりは小さく苦笑して。
「……何見てるの?」
気付けば、少女にそう話しかけていた。
少女はどこか困ったように息をつくと、「……紅葉」とだけ答える。
「紅葉?」
木々の梢を見上げ、にとりは首を捻った。紅葉の季節にはまだ早い。頭上でざわめく木々の葉はまだ青々として、晩夏の風にゆるやかにそよいでいた。
いったいどこに紅葉があるのか、それとも自分の知らない「こうよう」という別の言葉なのか。にとりが思い悩んでいるうちに、少女はまた視線を逸らしてぼんやりと梢を見上げ、
――不意にその頬を、雫が伝って落ちた。
「――――あれ?」
少女が戸惑ったように、濡れた頬を指でなぞる。
「ど、どうしたの? だいじょぶ?」
にとりも思わず声をあげた。そんな、いきなり泣き出されても困る。自分が何かした覚えも何も無いのに――
そんなにとりの戸惑いをよそに、少女の瞳からはさらにぽろぽろと雫がこぼれて。そのまま少女は、声もなく泣き出してしまった。
どうすることもできず、にとりはただそれをぼんやり見つめているしかなかった。
しばらくして泣きやんだ少女は、小さな声で「……ごめんなさい」と呟いた。結局泣きやむのを待つだけの格好になったにとりは、「う、ううん」と首を振る。
「えと、だいじょぶ? ……何かあったの?」
はいさようならというわけにもいかず、かと言って何も喋らないわけにもいかなくて、にとりはとりあえずそう尋ねてみる。
「…………」
少女はスカートの裾を握りしめてうつむくと、また消え入りそうな声で答えた。
「……なんでもないの。ただ、妹と喧嘩しただけ」
ほえ、とにとりは思わず声をあげる。その反応に首を傾げた少女に、にとりは目を細めて、
「いや、えと……私も、友達と喧嘩しちゃったんだ、さっき」
――本当は喧嘩じゃない。単に自分が一方的に、理不尽に怒って出てきてしまっただけなのに。それを喧嘩と呼んでしまうのは小狡い自己弁護のようで、にとりはまたそんな自分に溜息をつきたくなる。
「あ、そうだ、ええと……私、にとり。河童の河城にとり。えと、よろしく」
そこで名乗っていなかったことをようやく思い出して、にとりは慌てて名乗る。雛のときも同じことをやらかしたのに、反省の無い自分である。
「……秋静葉。紅葉の神」
少女はそう名乗った。やはり、秋の神様だったらしい。
樹にもたれて、静葉は空を見上げながら溜息を漏らす。つられてにとりもひとつ吐息。ぐるぐるな感情が渦巻いた溜息はふたつ重なって、晩夏の空に溶けていく。
雛が見れば、きっと自分も静葉も、たくさんの厄がまとわりついて見えるのだろう。
「……妹は、穣子はね、豊穣の神様なの」
不意に、静葉がぽつりと話しだした。それはにとりに聞かせるためというよりは、ただ溜ったものをゆっくり吐き出そうとするような、朴吶とした言葉。
「豊作をもたらすから、いつも人間の里に呼ばれて。おめかしして、おすましして、私の知らない誰かに今も笑ってる……。私には全然、笑ってくれないのに」
ぎゅ、とスカートの裾を握った手が震えていた。
「嫌われてることぐらい解ってるのに……。いつも、憎まれ口ばっかりだし……。なのに、なのに……」
「……妹さんのこと、好きなんだ」
思わず口からこぼれた言葉に、静葉は顔を上げて、それから小さく頷いた。
――その気持ちは、にとりにも解る気がした。もし今、雛に「嫌い」と言われたら。……想像したくもないけれど、それでも確かなのは――自分は雛のことを、嫌いになんかなれっこないのだ。
「……それがちゃんと言えたら、きっと喧嘩なんてしなくてよかったのに。昔みたいに、仲良しのままでいられたのに……」
ああ、そうだ。自分も同じだ、とにとりは思う。
雛が自分をどう思ってくれているのか解らなくて、だから不安で。
なのに、自分の気持ちは言わなくても雛は解ってくれているような気がしていて。
――自分では何も言わずに、雛の反応ばかりを期待していた。
自分から気持ちを伝えなければ、答えなんて解るはずもないのに。
「私も……人の役に立てる神様だったら良かったのに。そうしたら……せめてもうちょっとだけ、穣子と一緒に――」
と、そこで何か引っ掛かりをにとりは覚える。さっき静葉から聞かされた言葉に、何か違和感を覚える部分があった気がする。にとりは記憶をひっくり返して、その違和感の元を探り、
――思い出した。
「あれ? ……ねえ、妹さんと喧嘩したのっていつ? 今年?」
にとりがそう問いかけると、静葉はきょとんと目を見開いて、ふるふると首を横に振る。
「……もっと、だいぶ前」
「んんん? それで、妹さんは豊穣の神様なんだよね。豊作をもたらす」
「……うん」
静葉の答えに、にとりは違和感の正体を確信した。
「ねえ、妹さん、人間の里に行ってるって言ってたよね。……それ、本当?」
「――え?」
「だって確か、去年人間の里は別に豊作ってわけじゃなかったはず――」
そうだ。河童の里にいれば、盟友である人間の話は自然と耳に入ってくる。去年の実りはごくごく普通か若干不作ぐらいで、人間のために新しい農業機械を作ろうとかそんな話が上がっていたのをにとりは記憶していた。
「でも……穣子は居るだけで豊作にする力が……」
「だから、本当に人間の里に行ってるのかな? ……何か別の理由とか、あるんじゃ」
もちろんそんなのはただの推測で。静葉の妹が嘘をついているとしても、それが静葉にとって良い結果をもたらすかどうかなんて、にとりには解りっこない。
けれど――やっぱり、彼女は雛と似ている、と思ったのだ。
自分は孤独でなければならない、と思いこんでいた雛のように。
自分は妹に嫌われている、と静葉も思いこんでいるだけなのではないか――
そんなのはただのお節介で、姉妹の関係をこじれさせるだけなのかもしれない。
だけど、にとりにはどうしても――放っておけなかった。
「…………」
静葉は俯いて、意味もなく両手を組み替える。
「……だけど」
「このままでいいの? ずっと喧嘩したままで、好きってこと言えないままで――」
ああ、それは全く、自分に言い聞かせる言葉だった。
勇気を出せ、河城にとり。ごめんなさいを言う勇気と。……ちゃんと、気持ちを伝える勇気。
雛に謝らなきゃ。勝手に怒って出ていってごめんって。
――そして、ちゃんと言わなきゃ。雛に、自分の気持ちを。
言葉にしなきゃ伝わらないことを、ちゃんと伝えなきゃ――。
「――――みのり、こ」
ぎゅっと拳を握りしめて、静葉は顔を上げて……小さく、頷いた。
にとりも頷いて、そして胸に手を当てて、大きく深呼吸。
伝えよう。ちゃんと。大切な人に、自分の気持ちを。
そうしないときっと、何もかも前には進めないのだから――
後編へ(to be continued...)
⇒ こじたん (11/17)
⇒ 浅木原 (11/16)
⇒ こじたん (11/16)
⇒ 時の番人 (11/14)
⇒ 置き石 (10/14)
⇒ 葉月 (09/19)
⇒ ろっく (05/17)
⇒ 六仁祝 (08/27)
⇒ はまなす (06/20)
⇒ 橘 奏 (08/10)