貴方の花の名前
2008.09.06 Saturday | category:なのはSS(アリサ×すずか)
突発的に思いついたので死ぬほど久々にアリすず書いたよ! いつ以来だよ俺(ry
ヤマなしオチなし糖分微妙な感じですみません。
執筆中BGMは『貴方に花を 私に唄を』。Re:A姉さんもRe:nG兄さんも大好きです。
ヤマなしオチなし糖分微妙な感じですみません。
執筆中BGMは『貴方に花を 私に唄を』。Re:A姉さんもRe:nG兄さんも大好きです。
――名前なんていらないよ
君が呼んでくれないなら
「ねえ、すずか」
「うん?」
日曜の昼下がり。いつものように家の庭でふたりお茶をしていると、不意に本を読んでいたアリサちゃんが声をあげた。
「すずか、って、漢字で書くとどんな字だっけ?」
「え? えーと」
随分また唐突な問いに、私は一瞬考え込んでしまう。
私の名前は月村すずか。すずか、は平仮名で、そういえば漢字ではどんな字を書くのか、聞いた記憶が無かった。何しろ自分の名前なんて最初からそう在るのが当たり前だから、疑問に思った記憶も無い。
「……わかんない」
「何よそれ」
呆れたように肩を竦め、アリサちゃんはそれから携帯をぽちぽち弄ると、こちらに液晶の画面を差し出してみせた。
並んでいるのは、同じ「すずか」の読みを持つ名前。
涼風
涼香
涼花
鈴香
鈴花
「このへんじゃない? まさか『鈴鹿』ってこともないだろうし」
「それじゃサーキットみたいだもんね……」
それは女の子の名前としてはあんまり相応しくないだろう。
「でも、急にどうしたの?」
「いや別に、今読んでた本に名前の由来の話があったから、ふっと気になっただけ」
ふぅん、と私は首を傾げる。
「あ、そういえばアリサちゃんの名前の由来も聞いたことないよね」
「そだっけ?」
「うん」
アリサ・バニングスなんて名前だけど、アリサちゃんはれっきとした日本生まれの日本育ちである。「有紗」とか「亜里沙」とか、日本人でも無いわけじゃない名前だけど……。
「んーと、アルプスの少女ハイジは解るわよね?」
「え? う、うん、知ってるけど」
突然予想外の単語が出てきて、私は面食らう。
「ハイジの本名がね、ドイツ語でアーデルハイトっていうのよ。ハイジは愛称。んで、そのアーデルハイトって単語がフランス経由でアメリカに入って、変形して『アリサ』になったらしいんだけど」
「『ア』しか合ってない気がするんだけど……」
「あたしに言われても知らないわよ。ま、ともかく。アーデルハイトは『高貴な』って意味で、パパが立派なレディになってほしいって理由でつけたんだって」
「そうなんだ。ふふっ、素敵だと思うよ」
「――そ」
照れ隠しのように少し視線を逸らすアリサちゃんに、私は微笑む。
高貴な、かぁ。……ここにはやてちゃんが居たら「『高貴』ゆーより『好奇』のほうがお似合いとちゃう?」なんて茶化すんだろうけど。
「お嬢様、お茶のおかわりをお持ちしました」
と、そこで姿を現したのはノエルだった。
ちょうどいいので、自分の名前についてノエルに尋ねてみる。
「お嬢様のお名前ですか? ――特定の漢字をイメージしたわけではない、と聞いた覚えがあります」
「そうなの?」
「はい。強いて挙げるなら『涼風』か『涼花』だそうですが」
失礼します、とお茶のポットを置いてノエルは辞去する。カップに注がれた紅茶を口にすると、アリサちゃんは何やら小さく唸っていた。
「どうしたの?」
「いや、別に」
そんな難しい顔をしながら言われても説得力が無い。
「大したことじゃないわよ。……全然ホントに」
首を傾げると、ぷいっとそっぽを向いてしまう。
そんな態度を取られると、余計に気になってしまう。
「アリサちゃん?」
「……『涼風』だと、はやてと風繋がりよね」
「え?」
「んで、『涼花』だと、なのはと花繋がり。……それだけよ」
どこか頬を膨らませたまま、アリサちゃんはそんなことを呟く。
――ああ、なんだ、そういうことか。
ふふっ、と私が笑みを漏らすと、「あによ」とアリサちゃんはジト目。
私はそれを軽く受け流すと、席を立つ。手招きすると、アリサちゃんも首を傾げながらついてきた。
向かった先は、庭にある花園。様々な夏の花が咲き誇るその中に、とりわけ大きな白百合が咲いている。
「何よ、急に……」
「ほら、アリサちゃん、これ」
私が指さした花を、アリサちゃんも見上げた。私たちの背よりも高く、大きく咲く白い花。
「これ……カサブランカ?」
「うん。アリサちゃん、カサブランカの花言葉、知ってる?」
「え? ――……なんだっけ?」
首を捻るアリサちゃんに、私は悪戯っぽく微笑んで。
耳元にそっと唇を寄せて、囁いた。
カサブランカの花言葉――『高貴』。
⇒ こじたん (11/17)
⇒ 浅木原 (11/16)
⇒ こじたん (11/16)
⇒ 時の番人 (11/14)
⇒ 置き石 (10/14)
⇒ 葉月 (09/19)
⇒ ろっく (05/17)
⇒ 六仁祝 (08/27)
⇒ はまなす (06/20)
⇒ 橘 奏 (08/10)