東方野球in熱スタ2007異聞「六十日目の閻魔と死神」
2008.04.14 Monday | category:東方SS(東方野球)
全く唐突に東方SSです。しかも東方野球の三次創作です。需要? 知らんがな(´・ω・)
最終話後の映姫様と小町のお話。ネタバレ大量につき本編未視聴の方はご注意を。あと東方二次創作は詳しくないので変なところがあっても生温くスルーしてください\(^o^)/ とりあえず映季様はこまっちゃんの嫁。身長差萌え。
最終話後の映姫様と小町のお話。ネタバレ大量につき本編未視聴の方はご注意を。あと東方二次創作は詳しくないので変なところがあっても生温くスルーしてください\(^o^)/ とりあえず映季様はこまっちゃんの嫁。身長差萌え。
冬妖精の活気づき始める頃でも、再思の道は彼岸花で赤く染まっていた。
「一面の彼岸花、一面の彼岸花、一面の彼岸花……語呂がイマイチだねぇ」
絨毯のようなその赤に埋もれて、小野塚小町はふわぁ、とひとつ欠伸を漏らす。日は陰り、いささか肌寒くはあるが、死神である小町にとっては別に、昼寝に支障のあるような気候ではなかった。
自殺志願者に生きる気を取り戻させる彼岸花の毒気も、死神のサボり癖には効果は無い。いつもこの道で昼寝している小町の存在自体がその証拠だった。
「ふぁ……ちょいと、おやすみ〜」
誰にともなく呟き、小町は瞼を下ろす。心地よい暗闇が、ゆっくりと意識を閉ざしていき――
「やっぱりここに居ましたか、小町」
唐突にかけられた声に、冷水をぶっかけられたように小町は跳ね起きた。
「し、ししし、四季様!? さ、サボってません、サボってませんヨ?」
振り向けば、いつものように後ろ手を組んで、小柄な上司は小町を見つめていた。
「おやすみ、という声が聞こえましたが?」
「あ、いやそれは、その」
「少し仕事に余裕が出来たと思えば。本当に別の死神とトレードに出しましょうか?」
「し、四季様ぁ〜」
小町が情けない声をあげると、「冗談です」と映姫は不意に表情を緩める。
「けれど、仕事はしっかりやってもらわないと困ります」
ぺし。
「きゃん。……へ〜い、って、四季様はどうしてここに?」
「サボり癖のある水先案内人を見張りにです」
「ひぃ」
「というのも冗談で」
微笑する映姫に、小町は小さく首を傾げる。映姫がこんな風に、どこか楽しげに軽口を叩くのも珍しいことだった。
と、不意に映姫が小町に向けて何かを放った。「おっと」と受け取った小町は、それを見て目を丸くする。
それはつい最近まで、慣れ親しんでいた道具。
野球のグラブだった。それも、あの異変の間に小町が愛用していたもの。
「四季様?」
顔を上げた小町に、映姫は自らもグラブをはめて、ボールを手にどこか悪戯っぽく笑う。
「キャッチボール、しませんか」
◇
「久しぶりですねぇ、こうしてボールに触るのも」
「そうですね。私は最終戦の登板以来です」
映姫からの山なりの送球が、小町のグラブに収まる。
「なんか最近、あれが夢だったような気もしますよ。幻想郷スタジアムが消えて以来、誰も野球の話しなくなっちゃいましたし。まぁ、静かでいいですけど」
「あのホームラン以来、人気者でしたものね」
「あれはたまたまですって。あたいが打たなくたって、あのチームなら誰かが打ったでしょうし」
「けれど、現実にタートルズのリーグ優勝を決めたのは貴女です。それは誇っていいことですよ、小町」
「たはは……」
「本職の方でも、そのぐらい目を見張るような仕事をしてほしいものですが」
「そいつは言いっこなしですよ、四季様ぁ〜」
背の低い映姫に合わせて、低めの返球。映姫は丁寧にグラブに収めた。
「そういえばあの面々は、まだ野球で楽しんでるような話を聞きますが」
「あー、そういえばこの間、紅魔館球場で何かやってたみたいですね。なんで呼んでくれなかったかなぁ」
「お誘いならここにも来ましたよ。丁重に辞退させて頂きましたが」
「えええ!?」
「当然でしょう。休日返上で仕事をしなければいけないときだったのですか」
「……ですよねー」
今度は、真っ直ぐの鋭いボール。パシィ、とグラブがいい音をたてる。お返しに小町も、少し強めのボールを返した。
「……本当は、私も参加したかったんですけどね」
「四季様? っとと、急に変化球投げないでくださいよ」
「すみません、つい」
手元で横滑りしたボールを、慌てて手を伸ばして捕る。よくもまぁ、あの冬妖怪や月の姫は、こんな変化球を毎日何十球も受け止めていたんものだ。
「心残りが、少しばかりあるんです」
「心残り? ポストシーズンに出られなかったことですか?」
「それもありますけれど。――私は日曜しかチームに居られませんでしたから、あまりチームに貢献出来なかったのではないかと」
その言葉に、小町は肩を竦めて、また強めのボールを返す。
「11勝5敗、防御率2位の成績で何を言ってんですか、四季様。四季様こそもっと誇っていいんですよ。タートルズのエースは閻魔だって言ってた人も多いんですから」
「それは、光栄なことです」
また変化球。今度は捕れず、弾いたボールが彼岸花の中へ転々と転がっていった。
「あちゃあ」
頭を掻いて、小町は彼岸花の中に手を伸ばす。埋もれた白球はなかなか見つからず、小町の手は空を切るばかりで、
――不意にその背中に、もたれるような重みがかかった。
「四季様?」
「……私が、あのチームのために出来たことは、試合で投げることだけでした」
振り返ろうとした小町の動作が、微かに震えた映姫の声に止まる。
「……最終戦のあと、みんなに説教して回ったそうじゃないですか。そんなこと出来るのは、四季様だけでしょ」
「それは、閻魔として皆に善行を積んでもらうためにしたこと。――タートルズの一員として、ではありません」
「…………」
「小町。……本当は、あなたが羨ましかった」
小町の服の裾を掴んだ小さな手が、震えていた。
「私は結局、閻魔という役職から離れられなかった。チームが一丸となって優勝を目指しているときに、ひとり自分の都合を優先した。自分の勝手でチームに迷惑をかけた私が、皆に説教なんて本当は出来るはずが無かった。――私は、幻想郷タートルズの一員には、なれなかった」
「四季様」
「……すみません。ただの愚痴です、聞き流してください」
すっと小町の背中から離れ、映姫はくるりと背を向ける。
小町はひとつ鼻を鳴らすと――映姫の頭の上に、手から外したグラブを乗せた。
「何です――ふひゃっ!?」
振り向いた映姫の頬を、両手でむにっとつまんで引っぱる。
柔らかい頬。当然だが、マスクが剥がれたりはしなかった。
「い、いきなり何をするんですかっ!?」
小町が手を離すと、涙目で映姫は抗議する。小町は肩を竦めて、
「いや、四季様が全くらしくないことを言うもんですから、偽物じゃあないかとつい」
そして小町は、拾い上げたボールを映姫に放る。
「――四季様があのチームに参加してたのは、本当に閻魔として皆に善行を積んでもらうため、それだけだったんですか?」
「…………」
「仕事中も、試合の時間になると天狗のラジオ聞いてたとか。昼休みには他の閻魔捕まえてキャッチボールしてたとか」
「だ、誰ですかっ、小町にはバラすなって――」
真っ赤になって叫ぶ上司に、小町は苦笑して。
「野球、好きだったんですよね、四季様も」
「――――」
その言葉に、映姫は小さく息を飲んだ。
「いつだって、投げてる時の四季様は楽しそうでしたよ。そいつは、あたいが誰よりもよく知ってます」
「……よく見てますね」
「四季様があたいのこと見てる程度には、あたいも四季様のこと見てましたもの」
小町が笑ってみせると、映姫は恥ずかしそうに俯いて、ボールを手の中で転がした。
「あんな勝手な連中ばかりのチームが、曲がりなりにチームとしてまとまってたのは、結局のとこ、みんな野球が好きだったからじゃないですか? ――そうでなきゃ、こんな熱の冷めてしまった今も、キャッチボールしたりしませんて。ねぇ、四季様」
「……小町に説教されるとは、明日は三途の川が逆流しかねませんね」
「そりゃあ楽でいいや。そんなことになったら水先案内も休業でしょう」
「全く、貴方って人は」
ぺし。
「きゃん。冗談ですって、四季様ぁ〜」
「はいはい。仕事に戻りますよ、小町」
「へぇ〜い」
くるりと踵を返し、映姫は歩き出す。小町もやれやれと肩を竦めて、その小さな背中を追った。
「……そうだ、小町。次の日曜、紅魔館球場に行きませんか」
「へ? まぁ、あたいは構いませんけど。球場で何するんです?」
「勝負です。――あなたと私の」
振り向き、映姫は不敵に笑ってみせる。
「せっかく投手と打者とだったのに、対戦の機会はありませんでしたからね。――白黒つけましょう」
その言葉と一緒に投げ返されるボール。受け取り、小町も楽しげに笑った。
「面白いじゃないですか。四季様は右ですし、負けませんよ?」
「望むところです」
ボールを投げ合いながら、ふたりは小走りに去っていく。
その姿を、一面の彼岸花が見送っていた。
◇
是非曲直庁の一角、四季映姫・ヤマザナドゥの個室。
その机の上には、一枚の写真が飾られている。
映っているのは、グラウンドに整列したユニフォーム姿の少女たち。
裏には、こう記されていた。
9/30 紅魔館球場にて
幻想郷タートルズの仲間たちと
――背番号60 四季映姫
Comment
何というニヤニヤSS。もっとやって欲しいです。
ここで東方野球を知ってから、一気に東方に傾倒するきっかけを頂きました、本当にありがとうございました。
ここで東方野球を知ってから、一気に東方に傾倒するきっかけを頂きました、本当にありがとうございました。
Posted by: 久我暁 |at: 2008/04/14 11:25 PM
始めまして。
もともと東方野球を知っていた輩の一人でございます。
本家で紹介されていて、興味を持ったんで覗かせていただきました。
正直泣けました。映姫様萌え。
そして2人きりのときの小町のかっこ良さにニヤニヤでした。
またこういうの書いてください。
もともと東方野球を知っていた輩の一人でございます。
本家で紹介されていて、興味を持ったんで覗かせていただきました。
正直泣けました。映姫様萌え。
そして2人きりのときの小町のかっこ良さにニヤニヤでした。
またこういうの書いてください。
Posted by: 野本智裕 |at: 2008/04/16 12:24 PM
思わず目頭が熱くなりました
こうやって感動がバトンのように繋がっていくのは嬉しいものです。
有難うございました
こうやって感動がバトンのように繋がっていくのは嬉しいものです。
有難うございました
Posted by: nyannta |at: 2008/05/02 2:32 PM
>久我暁さん
自分も東方野球から本格的に東方に転びそうな気配です。
ニヤニヤして頂けましたなら幸い(・∀・)
>野本智裕さん
しきこまが俺のジャスティス(ry
東方野球SSはネタが色々あるのでまだまだ書きますサー。
>nyanntaさん
うわ、nyanntaさんだ! ここここんな辺境へわざわざありがとうございます……!
お忙しいでしょうがまた東方野球絵描いてください、楽しみにしてます(´▽`)
自分も東方野球から本格的に東方に転びそうな気配です。
ニヤニヤして頂けましたなら幸い(・∀・)
>野本智裕さん
しきこまが俺のジャスティス(ry
東方野球SSはネタが色々あるのでまだまだ書きますサー。
>nyanntaさん
うわ、nyanntaさんだ! ここここんな辺境へわざわざありがとうございます……!
お忙しいでしょうがまた東方野球絵描いてください、楽しみにしてます(´▽`)
Posted by: 浅木原忍 |at: 2008/05/04 12:55 AM
初めまして。
動画を見ていた一人です。
本家さんのHPにアドレスが載っていたので読ませていただきました。
映姫様と小町のコンビいいですね。
キャラクターの性格がバッチリでとても違和感なく読めました!
サンデー映姫と右の切り札
二人の対戦すら思い浮かべれる、とても良いノベルだったと思います。
どうもごちそうさまでした(笑)
動画を見ていた一人です。
本家さんのHPにアドレスが載っていたので読ませていただきました。
映姫様と小町のコンビいいですね。
キャラクターの性格がバッチリでとても違和感なく読めました!
サンデー映姫と右の切り札
二人の対戦すら思い浮かべれる、とても良いノベルだったと思います。
どうもごちそうさまでした(笑)
Posted by: エアーズ |at: 2008/05/08 9:08 PM
初めまして。
リニュ版から見始めた者でして
28話(日本シリーズ終了)までは我慢してましたw
しんみりしつつも 2828できる素晴らしいSSですね。
ご馳走様ですw
リニュ版から見始めた者でして
28話(日本シリーズ終了)までは我慢してましたw
しんみりしつつも 2828できる素晴らしいSSですね。
ご馳走様ですw
Posted by: |at: 2008/11/14 10:18 PM
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