ハラオウン家の家庭の事情 「クロノ・ハラオウンはロリコンなのか?」
2006.10.15 Sunday | category:なのはSS(その他)
久しぶりの短編更新。そしてなのはでは初めての男×女モノ。てことでクロノ×エイミィです。いや元々幼なじみスキーなので男女モノもいけるのですよ? 5人組ではやらないだけで。クロノとエイミィは幼なじみの範疇だしー。
てことで、アースラクルーの飲み会でクロノが色々と問い詰められたり、エイミィが泥酔したりする話。たまにはこういう普通のラブコメ書くのもいいですな。クロノ×エイミィの組み合わせはお気に入りなんで、気が向いたらまた書くかもー。
てことで、アースラクルーの飲み会でクロノが色々と問い詰められたり、エイミィが泥酔したりする話。たまにはこういう普通のラブコメ書くのもいいですな。クロノ×エイミィの組み合わせはお気に入りなんで、気が向いたらまた書くかもー。
「はい、それでは今回の巡航任務も何事もなく終わったことを祝しまして、かんぱーい!」
『かんぱーい!』
母さん、もとい艦長が楽しげに乾杯の音頭をとり、グラスがぶつかり合う音が響き渡った。
海鳴市某所、居酒屋「夜天」。そこに、アースラクルーの総勢20名が集まっていた。定期巡航任務を終えたあとの、恒例の打ち上げである。
今まで打ち上げはミッドチルダでやっていたのだが、先日の花見以来、こっちの酒にハマってしまったクルーが多く、打ち上げ会場も移動してしまったのだ。
誰も彼も楽しげに、ビールがなみなみと注がれたグラスを美味そうに傾けている。そんな様子を横目で見ながら、僕もウーロン茶に口を付けた。
一応ミッドチルダの法律では既に飲酒可能な年齢になったが、こっちの世界では20歳まで飲酒は不可らしい。郷にいれば郷に従え。……従っているのは僕ぐらいのようだが。
それに酔いつぶれた知り合いの惨状を何度となく目にしているので、あまり積極的に酒を飲もうという気にはなれないのである。
「お待たせしました、唐揚げと串焼きです」
「おほっ、肉肉〜!」
運ばれてきた料理に、アルフが目を輝かせている。その後ろでフェイトは、遠慮がちにウーロン茶を飲んでいた。打ち上げ初参加のフェイトは、この雰囲気に少々気圧されているようだ。
艦長はギャレットの酌を受けて、楽しげにビールを空けている。エイミィは女性クルーたちと何やら盛り上がっているようだ。
「こら成長期の少年、いいから食え食え」
と、隣から料理の盛られた皿が押しつけられる。振り向くと、既に顔を赤くしたアレックスがニヤニヤと笑いながらこちらを見ていた。
「そうそう、ついでに飲め飲め。15になったんだろ、もう大人だ」
今度は反対側から、ビールの注がれたグラスが押しつけられる。ランディだ。いつの間にか2人に挟まれるような格好になっている。
「いや、僕は酒は……。というか、大人と少年とどっちなんだ」
「どっちでもいい、今は飲め、そして食え」
肩を掴み、ぐい、とグラスを押しつけてくるランディ。
「そうだ、飲め! そして俺たちに本音を聞かせろ! ぶっちゃけるんだ!」
反対側からアレックスにも押さえつけられる。いや、ちょっと待ってくれ。というか本音って何だよ! ぶっちゃけろと言われても、何を……
「いや、だから僕は……」
「黙れ! 逃げるな! 男なら立ち向かえ! というか今日は飲むまで帰さん!」
もう意味が解らない。だがひとつ確かなのは、僕がビールを飲むまでは、この2人は本気で離してくれそうにないということだ。
「……解ったよ。ただし、一杯だけだからな」
「よっ、大将! さすが!」
「イッキ! イッキ!」
まるっきり体育会系のノリである。覚悟を決めてグラスを受け取ると、ぐっと泡だった液体を喉に流し込んだ。
……苦い。正直、なんでこれをそんなに美味そうに飲めるのだろう。謎だ。
「おーっし、よく飲んだ!」
「これでお前も立派な男だ、クロノ・ハラオウン!」
何だそれ。成人の通過儀礼か。
「……ほら、飲んだぞ。これでいいだろ」
「いや、まだだ。貴様のぶっちゃけトークを聞くまでは離さん!」
押さえつける手を離そうとするが、アレックスとランディはますます強い力で押さえつけてくる。目が据わってるぞ、おい。
「だからさっきから何なんだよ、本音とかぶっちゃけとか……僕に何を言わせたいんだ」
飲みかけだったウーロン茶を手に取る。流し込んだアルコールが、じん、と頭のどこかを痺れさせはじめていた。
身体がぽかぽかと熱を持ってくる。それを冷まそうと、僕は冷たいウーロン茶を口に含み、
「OKハラオウン執務官、単刀直入に聞こう。――お前はロリコンか?」
噴いた。
「……っ、なっ、何だ、いきなりっ」
「10歳は犯罪だと言っているんだっ」
呪詛のように言葉を吐き出すアレックス。いや、だから意味が――
「ハラオウン執務官はいたいけな10歳の少女3人を弄んでいる」
「はぁ!?」
「そういう噂が一部でまことしやかに囁かれている」
大真面目な顔でとんでもないことを言い出すランディ。
「管理外世界の住民をたらし込んで入局させ、義妹の教官を自ら買って出て四六時中侍らせ、さらには魔導騎士にまで手を出したとか出さないとか」
「なのはとフェイトとはやてのことかっ!?」
「それ以外に誰がいるんだ」
「壮絶な誤解だっ」
「それが嫌ならその役得ポジションを俺に譲れっ」
背後からアレックスに羽交い締めにされる。いや普通に苦しいから! チョークチョーク!
「本当だな? 本当になのはちゃんとも、フェイトちゃんとも、はやてちゃんとも何も無いんだな?」
「な、無い! 断じて無いっ」
「よもやそこで、実はアリサちゃんやすずかちゃんと」
「あるかっ」
お前らはそんなに僕をロリコンにしたいのか!?
「そうか……なら、やはりエイミィさんなのか」
「は!?」
何でそこでエイミィの名前が出てくるっ!?
「そうだな、そもそも根幹はリーゼ姉妹なんだからな。やはり年上趣味か」
「やはりって何だやはりって! アリアとロッテが何だって言うんだっ」
「ハラオウン執務官がリーゼ姉妹に仕込まれたのは、魔力だけではないとこれまた専らの噂」
「意味が解らないっ」
「実際、エイミィさんとは本当に何も無いのか? 士官学校時代からの付き合いだろう?」
不意に、こちらを見据えるランディの目つきがひどく真剣なものになる。酒に酔っているとは思えないほどに。
「何も、って……。エイミィは、僕の姉みたいなものだ」
「自分がそう思っていても、相手はそうじゃないということは往々にしてあるものだぞ?」
「いや、エイミィに限ってそれはない!」
断言できる。エイミィが僕に? ありえない。それはもう絶対に。
あいつにとって僕は、弄り甲斐のある弟分だ。どう考えても、それ以上でもそれ以下でもない。
そりゃまあ、以前旦那さん候補だとか何だとか言われた記憶もあるけれど、あれだってほとんど冗談みたいなものだ。
「しかし、家族でも無いのに同居しているのも事実だろう?」
「いや、それは」
「ぶっちゃけた話、今のお前とエイミィさんの関係は、数年後にはなし崩しに結婚のパターンだ。間違いなく」
「そんな馬鹿な……」
結婚? 僕とエイミィが? ……想像できない。無理だ。うん。
「はーいそこー! 一体何の話で盛り上がってるのかなー!?」
と、そこに唐突に、当の本人――エイミィが割り込んでくる。
「え、エイミィ? お前、顔真っ赤だぞ!?」
「いぇーい!」
いや、「いぇーい!」じゃなくてだな!
「ああエイミィさん、今ちょっとクロノ執務官のロリコン疑惑に関して尋問をしてたところで」
「アレックス!」
「えー? クロノくんがロリコン? ――あっはっは、それ大正解!」
「な゛っ――」
エイミィの爆弾発言に、アレックスとランディが大仰に歓声をあげる。エイミィ、なっ、何を言い出すんだっ!
「だって聞いてよ、クロノくんったらさぁ、家でフェイトちゃんに『お兄ちゃん』って呼ばせて悦に入ってるんだよ? 血の繋がらない妹萌えとか言ってるんだよ? 人として色々と駄目だよねー!」
「え、エイミィ! 勝手に話を捏造するなっ――」
立ち上がろうとした肩を、ぐゎしと掴まれる。……寒気を覚えながら振り向くと、その背後に炎を噴き上げるアレックスがいた。
「…………OK、ハラオウン執務官、言い訳は地獄で聞かせてもらおう」
「ま、待てアレックス、誤解だ! ランディも何か、」
「弁護の余地は無いな」
「ちょっ――」
「まーまー大丈夫大丈夫! フェイトちゃんの純潔はあたしが守るし! そもそもフェイトちゃんが好きなのはなのはちゃんだから、概ね問題なしっ!」
「え、エイミィ! いきなり何言ってるの――」
フェイトの悲鳴とエイミィの大声に、「がんばれフェイトちゃーん!」だの「百合幼女萌えー!」だのわけのわからない歓声が湧きあがる。
そして――僕の周囲に集まってくるのは、殺気だった男性クルーの面々。
その瞬間、僕は死を覚悟した。
――さよなら人生。
◇
「……ううう、飲み過ぎた……」
「………………」
居酒屋の壁にもたれて呻くエイミィに声をかける気力も、今の僕には残っていなかった。
――正直もう、数分前までのことは思い出したくない。PT事件や闇の書事件より、ある意味よっぽど修羅場だった……。
アレックスやランディたちは、二次会だと盛り上がっている。フェイトとアルフは既に母さんが一足先に送っているから、あとは僕たちがどうするか、なんだが。
「くーろーのーく〜ん」
「のわっ!?」
突然背中にぐったりとのしかかった重み。酒臭い息が顔にかかる。
エイミィが今度は、壁ではなく僕の背中によりかかっていた。
「……エイミィ、歩けるか?」
「う〜……無理……」
こりゃ駄目だ。近くのクルーに声をかけて、ここで抜けることを告げると、僕はエイミィに肩を貸して歩き出した。
「全く、調子に乗りすぎだ」
「はんせいしてま〜す……うぷ」
「ここで吐くなっ!」
千鳥足のエイミィを何とか支えながら、夜の道を歩く。早いところ大通りに出てタクシーを拾おう、うん。
「……ねー、クロノくん」
「ん?」
「あたしはぁー、クロノくんがー、ロリコンでもー、気にしないよー?」
まだそのネタを引っぱるか。酔っぱらいの繰り言に、僕は溜息をひとつ。
「だから、さっきから何度も違うと……」
「男の子ってさぁー、自分より背の高い子と付き合うの、嫌がるもんねー」
「は?」
「そりゃそうだよねー、ちっちゃくてか〜わいい妹の方がいいよねー」
……さっきから何を言ってるんだ、エイミィは。
ひどく間延びした調子で、エイミィは言葉を続ける。
全く予想だにしない言葉を。
「ぶっちゃけるとー、あたしは結構クロノくんのこと好きなわけですよ?」
「っ!?」
「このままー、クロノくんと結婚ー、とかっていうのもー、それはそれでいいと思ってるわけですよー?」
「な、なっ、なっ、」
衝撃に、口が上手く回らない。思考が全力で空回る。
エイミィの、あまりに突然の発言。その内容を、上手く脳が認識してくれない。
――咄嗟に思い出すのは、ランディの言葉。
『自分がそう思っていても、相手はそうじゃないということは往々にしてあるものだぞ?』
ま、まさかエイミィが本当に……?
待て、いやいや待て、クールになれクロノ・ハラオウン。相手は酔っぱらいだ。OK、故にこれも酔っぱらいの繰り言だ。深い意味もないし、特に気にすることもない。
「身長であたしを追い越してくれればー、言うことないんだけどー……って、信じてないですなー?」
僕の顔をジト目で睨んで、エイミィはそんなことを言い出す。僕の心を読んでるのかっ!?
「エイミィさんはわりと真剣なのですよー? 愛の告白なのですよー? ドゥユーアンダースタン?」
いや、そういう言い方を真剣とは言わないだろう。……やっぱり酔っぱらいじゃないか。
ああもう、何を驚いていたのやら。自分自身に呆れたように、僕は溜息をひと――
唇に一瞬、何か柔らかくて温かいものが触れた。
「……………………え?」
何が何やら、さっぱり解らない。何だ、今の? え? 唇に、……え? 顔が、エイミィの顔が……すぐ、近く。
「あははーっ、隙ありなのだよー、クロノくーん」
楽しげに笑って、――そしてエイミィは、抱きつくようにして僕の身体にもたれてきた。
「え、え、えええ、エイミィ?」
「クロノくん……」
切なげな声が、耳元で囁かれる。首筋にかかるエイミィの吐息。もたれた身体の柔らかさ。
――ああ、もう、何なんだ。なんで顔が熱いんだ。飲まされたアルコールのせいか。そうに決まってる、
「クロノくん、あたしね……」
ぎゅっと、エイミィの手が僕の背中をきつく掴んだ。短い髪が頬をくすぐって、アルコールの匂いの中に、ふわりとした柔らかい匂いが混じっていて――
「あのね、あたしね――」
ごくり、と喉が鳴った。その次にくるエイミィの言葉。それは、とても、決定的に、
「――もうだめ、吐く」
致命的だった。
「ちょっ、ま、待て、エイミィ! ここで吐くな! 離れろ、というか離せ――」
「――うぷ」
「わ、うわ、わわわ、うわあああああああああああああああああああっ!」
悲鳴が――夜の海鳴市に、長く長く、響き渡った。
◇
翌日。
「うぅ……頭痛い……飲み過ぎた……」
ベッドの中で、青い顔で呻くエイミィの姿があった。
「……そりゃ、あれだけ飲んだら、当たり前だ」
水の入ったコップを差し出して、僕は溜息混じりに呟く。
――おかげで、昨日は酷い目に遭った。それはもう、何重もの意味で。おまけに、
「あー、もう昨日のこと何も覚えてないよ……」
これである。……一言一句覚えている僕の身にもなってくれ。
結局あれは酔っぱらいの妄言だったのか、それともエイミィの本音だったのか……。
もし後者だったとしたら……僕は。
「ねー、クロノくん。あたし何か変なこと言ったりしてなかった?」
「――さあ、な」
……とりあえず今は、聞かなかった、何もなかったということにしておこう。
それは、現状からの逃げかもしれないが……今は、まだ。
「まあ、今日は休みなんだ。ゆっくり寝て、明日にはちゃんと復帰してくれよ、エイミィ」
「ん……」
毛布を被り直し、それからエイミィはふと、こちらを振り向く。
「……何か、今日のクロノくん、優しいね?」
「っ――別に、そんなこと、無い」
そうとだけ答えて、僕はエイミィの部屋を出る。リビングに戻ると、母さんとフェイトがお茶を飲んでいた。
「あ、クロノ。エイミィの様子、どう?」
「ただの二日酔いだよ。寝かせておけばそのうち元気になるさ」
椅子に腰を下ろし、僕は肩を竦めてみせる。フェイトはそれに苦笑した。
「クロノ、あなたもお茶にする?」
母さんが急須を手に言う。僕は頷こうとして――ふと、思い直し、こう答えた。
「いや……今日は、牛乳にしよう」
Comment
どうも、クリューゲル=ストランザーです。
いやいや。「なのはBURNING」も楽しみなのですがこっちもけっこう待ってました。前に自分が言った「クロノ視点」が読めて非常に面白かったです。
もー、アレックスとランディのオペさんズ(勝手に命名)の絡みッぷるが爆笑。それに便乗してきたエイミィさんは更に爆笑。幼馴染スキーは自分も同じなので、非常に共感できます。
これからも頑張ってください。アースラの食堂で皿洗いをしながら続きを待っています。それでは。
いやいや。「なのはBURNING」も楽しみなのですがこっちもけっこう待ってました。前に自分が言った「クロノ視点」が読めて非常に面白かったです。
もー、アレックスとランディのオペさんズ(勝手に命名)の絡みッぷるが爆笑。それに便乗してきたエイミィさんは更に爆笑。幼馴染スキーは自分も同じなので、非常に共感できます。
これからも頑張ってください。アースラの食堂で皿洗いをしながら続きを待っています。それでは。
Posted by: クリューゲル=ストランザー |at: 2006/10/15 10:46 AM
>クリューゲル=ストランザーさん
いつもながら感想ありがとうございます〜。幼なじみスキーでありましたか! 仲間!( ・∀・)人(・∀・ )
StSのクロノ×エイミィ公式化を受けて、このカップリングはいろいろネタにしていきたいところです。たぶんBURNINGでも。ではでは。
いつもながら感想ありがとうございます〜。幼なじみスキーでありましたか! 仲間!( ・∀・)人(・∀・ )
StSのクロノ×エイミィ公式化を受けて、このカップリングはいろいろネタにしていきたいところです。たぶんBURNINGでも。ではでは。
Posted by: 浅木原忍 |at: 2006/10/15 1:53 PM
自分こーゆー終わり方が大好きなのですよ!!
いやぁ〜エイミィーさん絶対に覚えてるでしょう?!
いやぁ〜エイミィーさん絶対に覚えてるでしょう?!
Posted by: れあな |at: 2007/10/31 3:09 PM
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