か け お ち
2007.04.12 Thursday | category:投稿&頂き物SS
「…それ……なのはが、結婚、するってこと?エイミィ」
うわっいきなりそこへ行き着くのっ。
これは、言わない方が良かったかな…。
「違う違う。最近、管理局で局内恋愛推進してて、その煽りをなのはちゃんが受けてるってだけ。ちょっとお見合いするだけだよ」
「なのはが……結婚…」
「いや、だから。まだお見合いするだけだって」
あー、やっぱりショック大きいか。急だもんね。
「ふぇ、フェイトちゃんは、こういうの興味ない?…よね?」
「…ある…」
「へ?お見合いしてみたいの?」
実はフェイトちゃんも男のコに興味があるとか…。
「違うよ。なのはのお見合いに、興味があるんだ…」
「え…」
あ、そっちか…。
「エイミィ、その、なのはのお見合いの相手って、どんな人…?」
「…うーん、できれば、知らない方がいいかもしれないよ…?」
「…お願い、教えて…お姉ちゃん…」
あぁ…その言葉には弱い……。
「……相手は、ね…」
―なのはがお見合い。
それを聞いて急にココロが重く感じた。
勝手に体が動いてた。
気がついたらお見合い先のホテルの、それもお見合いが行われてるはずの、部屋の前にいた。
どうやってここまで来たのかもいまいちよく覚えていない。
多分、管理局員、執務官という肩書きを盾に、ここまでやってきたのだろう。
私はなのはのことになると、どんなことでもしてしまうようだから。
なのはのためなら、どんなことだってできる。なのはが、大切だから。
けど、今回は……。
…なのはのために、なってるのかな。…分からない。
それでも私は確かめなきゃいけない、確かめたい。なのはに。
本当に、これでいいのかを。自分の人生の伴侶を、ここで決めていいのかを。
友達として。親友として。……大切な、人として。
……そう、それだけだ。…理にかなってる、……はずだ。
ドアを開け放つ……。
「失礼します」
「へ?ふぇ、フェイトちゃん!?」
「フェイト!?」
……。ゆっくりと室内を見渡す。
大きなテーブルがあって…。
右から……なのは。
真ん中に、グレアム元提督。
そして……。
左側に……ユーノ。
「ど、どうして」
「ここに!?」
両側から驚きの声が上がる。けど、真ん中の人は動じない。
「……フェイト君、か。久しぶりだね……何か、急な用かね?」
「………なのはに用があって来ました」
「ふぇ?」
「…どんな用だね?見ての通り今はこの二人の将来を決めるかもしれない、大切な話をしているのだよ」
…邪魔だ。遠回しにそう言われた様な感覚。二人の将来……確かにそうかもしれない。けどそれは、二人だけじゃない。
「……だからこそ、私は、なのはに確かめなければならない、義務があります」
「義務?……君がなのは君の友人であることは知っているが、この件は―」
「私は……なのはの、大切な人です……」
「………」
思い上がり?……違う。私はもう6年もなのはと共に生活してきた。いつもなのはを見ていた。ずっとなのはを好きでいた。だから分かる、分かってる。
………。
グレアム元提督と睨み合うこと数秒。私は視線を大切な人へと移す。
「…行こう、なのは」
「え、でも…わっ」
なのはの左手を取って早歩きでドアに向かう。
「ちょ、フェイトちゃんっ」
「フェイト、なのはっ!!」
後ろからユーノの声が聞こえてくる。けど私は振り向かない。
そして…そのまま駆け出す、なのはを引っ張って。
「………」
「…ユーノ君、追わなくて良いのかね?」
「…今日は、上層部が勝手にセッティングしたお見合いですから。…今度はちゃんと自分の力で、なのはと…」
「……そうか」
――ホテルを出て、近くの公園まで走ってきたところで休憩。
私もなのはも目を合わせようとはしない。…ううん、私が一方的にそっぽを向いてるだけかも。
「ふぇ、フェイト、ちゃん……」
「………」
無視。
「…フェイトちゃんっ」
「………」
また無視。
「…うぅ…フェイトちゃあん…」
「………なに?」
か弱い声が聞こえてきて、たまらず返事をする。私はやっぱり、なのはに甘い。
「……ど、どうしたの?お、怒ってない?」
「……どうして?」
「だって……怖い顔、してるから…」
必死でムスッとした顔を装い続ける。これは、私の意地。
「…こういう顔なんだ」
「違うよっ!」
全力で否定される。私だって本当はこんな顔したくない。
けど、今はそうしないと、なのはのためにならないから。言わなきゃいけないから。
「ねえ、なのはは…」
「え?」
「…お見合い、どうするつもりだったの?」
「どうする……って?」
「ユーノと…」
「……わ、私はただ、久しぶりにユーノ君に会えるって聞いたから来ただけで、別に、お見合いのことだとか、結婚のことだとかは、あんまり…」
「……そう…」
…やっぱり。なのはのことだから、そうなんじゃないかと思った。
…けどやっぱり心の底では嬉しくて、頬が緩んでしまいそう。
…ダメだ。ちゃんと、言わないと。
「…ダメだよ、なのは」
「え?」
「…ユーノに会えるからって、お見合いなんかしちゃダメだよ」
「け、けど…」
「っダメったら、ダメなんだ!!!」
「っ」
………。
……びっくりした、自分でも。
私が、なのはを、怒鳴った……。
「………ん…」
…なのはが、俯いて悲しい顔してる。なんだか、私まで悲しくなってくる。
自分が、なのはにこんな顔させてるんだって思うと……。
「……私に何も言わずに、お見合いなんかしたからだよ」
「……ごめんね。………ふふ、さっきのフェイトちゃん、すごくかっこよかったよ」
「えっ…そ、そうかな」
なのはに褒められる。今まで何度、それによって救われたことか。現に今、重苦しい空気が、たちまち軽くなったような気がする。
世界でたったひとり、なのはだけが私に有効な、『言葉の魔法』。
「けど……なんだか、大変なことになっちゃったね…」
「………」
確かに、大変なことをした、と思う。局の名の元で行われている『会談』の邪魔をしたのだから。
「…大丈夫だよ、私がなのはを護るから」
たとえ管理局を追われたって、なのはを護りきる。
そう、なのはのためならなんだってできる、できる気がする。…なのはが、大切だから。
「……なんだか私達、駆け落ちしてきたみたいだね」
……かけ、おち?
前にテレビで見た、聴いた記憶がある。
男の人と女の人が手と手をとってどこかへと逃げていく光景。
それを…私と、なのはが?……。
「……じゃあ、このままなのはをさらって行っちゃおうか」
「あはは、嬉しいなっ」
…うぅ、ちょっとは本気で言ってみたのに。本音なのか、茶化されてるのか、よく分からない…。…なのはらしいや…。
「にゃはは、私のお見合いダメにしちゃったんだから、ちゃんと責任とってくれなきゃダメだよ?」
「……も、もともと、そのつもりだから…」
「へ?…どういうこと?」
「……」
……なのはの、ばか…。
その、私とでも、局内恋愛になるじゃないか。私だって、管理局員なんだから。
「…なのはには、わ、私がいるんだから、心配しなくても大丈夫だよ」
「……えへへ、そういえば、そうだね」
わ、……なのはが私の左腕に自分の右腕を絡めてくる。
「それじゃ、これからもよろしくねっフェイトちゃんっ」
「……うん…」
…ちゃ、ちゃんと分かってくれてるのかな、なのは…。
……私の理想は、遠いような、近いような…よく、分からない。……まあ、いいのかな。今、こうしてなのはの右腕を捕まえていられるから…。
あれ?……なんだか去年も同じようなことを考えてたような……。
………。
毎年、いつも同じことを考えさせられる、不思議な季節と、この少女〜なのは〜――。
フェイト・T・ハラオウン。
いろいろ悩みの多い、14歳の春です――。
Comment
なのはSNS内で読んだ冒頭の後がどうなるのかとても気になっていました
まさか、相手があのお方だったとは・・・フェイトさん、なのはを連れ去って正解です。
そしてお見合いをダメにしてしまったのだからちゃんと責任をとってなのはを幸せにしてあげてください、護ってあげてください。
まさか、相手があのお方だったとは・・・フェイトさん、なのはを連れ去って正解です。
そしてお見合いをダメにしてしまったのだからちゃんと責任をとってなのはを幸せにしてあげてください、護ってあげてください。
Posted by: 鴇 |at: 2007/04/13 12:18 AM
一応、御仁は仲介人ですよ?w
ブランクあったので期待外れだったかも…スミマセンorz
次回作に期待を…(ぉ
ブランクあったので期待外れだったかも…スミマセンorz
次回作に期待を…(ぉ
Posted by: mattio |at: 2007/04/13 12:24 AM
ををっ
「あの話」の続きですか!
うん、素晴らしい展開ですな。
フェイト嬢が望むなら邪魔の手伝いなんぞ鴻毛の如きですが、自分で何とかしちゃったみたいですね。
>かけおち
大丈夫、支援者は星の数程居るから。
ところで、なのはさんにとってフェイト嬢がこのお見合いを壊しに来る事自体想像の埒内…と言う妄想がふと浮かびました…
もしそうだとしたら怖いなぁ…
「あの話」の続きですか!
うん、素晴らしい展開ですな。
フェイト嬢が望むなら邪魔の手伝いなんぞ鴻毛の如きですが、自分で何とかしちゃったみたいですね。
>かけおち
大丈夫、支援者は星の数程居るから。
ところで、なのはさんにとってフェイト嬢がこのお見合いを壊しに来る事自体想像の埒内…と言う妄想がふと浮かびました…
もしそうだとしたら怖いなぁ…
Posted by: LNF |at: 2007/04/13 12:41 AM
>LNFさん
はい、というわけでLNFさんの予想通り、お見合い相手はユーノ君でした〜(笑)
かけおちしたって平気ですよね、だってきっと管理局の方が潰されちゃう勢いですよ、二人の邪魔したら(ぉ
内通者も多そうだし(笑)
>想像の埒内
ハハハ、マサカア(裏声
はい、というわけでLNFさんの予想通り、お見合い相手はユーノ君でした〜(笑)
かけおちしたって平気ですよね、だってきっと管理局の方が潰されちゃう勢いですよ、二人の邪魔したら(ぉ
内通者も多そうだし(笑)
>想像の埒内
ハハハ、マサカア(裏声
Posted by: mattio |at: 2007/04/13 12:50 AM
駆け落ちする必要性無いような・・・どうせ皆さん,きずいているでしょうに,二人のための場所を。 あ、そうえば,少々のネタバレかもしれませんがリィンが二人のための部屋を用意しました。といっていたけど,やっぱり,2話の救助活動の後ってまさか・・・。 ではまたまた。
Posted by: mayu |at: 2007/04/13 9:13 PM
>mayuさん
>駆け落ちする必要性
まあこれも春の陽気に当てられた可愛いフェイトさんの妄想(暴走?)ということでw(マテ
>2話の救助活動の後
ごめんなさい、まだ1話すら見てませんorz
>ではまたまた
はい、次回作もなにとぞw
>駆け落ちする必要性
まあこれも春の陽気に当てられた可愛いフェイトさんの妄想(暴走?)ということでw(マテ
>2話の救助活動の後
ごめんなさい、まだ1話すら見てませんorz
>ではまたまた
はい、次回作もなにとぞw
Posted by: mattio |at: 2007/04/13 11:09 PM
よかった。。。。
なのはとフェレットが結婚しなくてよかった(泣
なのはとフェレットが結婚しなくてよかった(泣
Posted by: reana |at: 2007/11/01 3:03 PM
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