八神家家族相談室
2007.03.22 Thursday | category:投稿&頂き物SS
こちらは伊織さんより。はやて師匠の人生相談話です(なのか?)。
「あのね、ちょっと相談なんだけど」
ブカブカのパジャマから風呂上りの薄っすらと上気したうなじを覗かせながらフェイトが切り出す。
お泊り特有の非日常を漂わせた空気に、フェイトの相談が飛び切りのスパイスとなると感じたなのはとはやては黙って続きを促す。
なのはとはやてからやや背を向け、体育座りまま俯いていたフェイトは顔を膝の上にのせて力なく呟いた。
「家族ってどんな風にすればいいのかなぁ……」
フェイトは問うだけで精一杯という感じで、また俯いた。フェイトの俯き加減に、ベッドにもたれかかっていたなのはは、体を起こしてフェイトへと向き直り不安そうに確認する。
「フェイトちゃん。リンディさんやクロノ君と何かあったの?」
言外に滲ませたケンカでもしたんじゃないかという感情を感じ取ったフェイトが、慌てて否定する。
「違うの。そうじゃないの」
「そんなら、何かあったん?」
ケンカじゃないならなんやろー、とベッドで首を傾げるはやて。
「最近クロノが悩んでるんだ」
フェイトの悩みだと思っていたところに急にクロノの名前が出てきたために、さらに首を傾げる二人。
「なんかね、どうすれば私のお兄ちゃんらしくできるか、って悩んでて。で、私はどうすればクロノの妹らしくなれるかなぁ、って…………」
思ってるんだけどどうしても分からなくって、とフェイトは弱弱しく呟いた。
その問いに、なのはとはやては思わず顔を見合わせ、たった今自分が聞いた事を繰り返す。
「クロノ君が、フェイトちゃんのお兄さんらしく振舞うには、って悩んでいて」
「フェイトちゃんが、クロノ君の妹らしく振舞うにはどうすればええか、悩んでるー、と」
お互いに自分が聞いた内容が間違っていないことを確認すると、同時に深か深かと溜息を吐いた。その仕草にフェイトは不安げに声を震わせる。
「…………やっぱり変なのかな、私」
フェイトは泣きそうな顔を見せないようズボンの弛んだ生地を両手で膝頭に集めると、そこに顔を強く膝に押し付けた。そんなフェイトを背中から優しくなのはが抱き締める。
「ゴメンね。フェイトちゃん」
フェイトの脇から腹部へとまわした手を組むと、んっ、と声をかけて体を起こさせる。やっ、と薄っすら潤んだままの瞳でフェイトが抗う。と、その頭をふわりと撫でる手があった。ベッドから身を乗り出してはやてがフェイトを撫でたのだ。
「ゴメンな。フェイトちゃん。あんまりにもクロノ君が贅沢でなー」
呆れて声が出えへんかったんやー、と謝るはやて。
「なんだか、フェイトちゃんらしい相談だね」
顔を蔽った金色の髪を優しく指で背中へと梳きながらなのは呟く。
「変、じゃないの?」
伺うようなフェイトの声に、うーんと悩む声をなのは上げ、壁にもたれるようにしてはやてが渋々答えた。
「クロノ君が甲斐性無しというたらええんかなー」
「かいしょうなし?」
耳慣れない言葉にフェイトがぽかんとした顔をする。唯なんとなく良い意味じゃないんだろうな、と察した。
「えーと、頼りないというか情けないというか」
なのはの苦笑した声が耳元でしたことで、フェイトは抱き締められていることに今更ながらに気付き身を硬くする。なのははそれをクロノが馬鹿にされて怒ったと思ってわたわたと慌てながら補足した。
「だってね、フェイトちゃんがこんなに悩んでるのって、クロノ君がフェイトちゃんとちゃんと向き合っていれば済んだことだからね」
それから逃げてるっぽくて、お仕事の時とは違って情けないなーと思ったんですが、と段々尻すぼみになる、なのは。
「まぁ、そないきつく言うのも酷な話かもしれへんね」
私かてシグナム達と半年以上色々あって今の関係なんやし、と笑う。その言葉になのはもうーんと考え込む。
「なのは?」
伺う声に、なのはが纏まらないまま話し出す。
「確かに私とお兄ちゃんはまったくの兄妹って訳じゃないけど、私が生まれた時からお兄ちゃんはお兄ちゃんだったから、私はフェイトちゃんみたいな悩みってのはなかったしなぁ…………」
フェイトちゃんの力になれなくてゴメンね、と謝るなのはに、フェイトは首をブンブンと振って答える。
「そんな、なのはが謝ることじゃないよ。変なことを聞いた私が悪いんだから」
はやては、そんなフェイトの自嘲気味な発言に訂正を入れる。
「フェイトちゃんが悪いんやなくて、変にお兄さんらしくなろうとするクロノ君が悪いんやー、いうこと」
な? とはやてが笑いかけ、なのはがそうそうと同調する。フェイトはそうなのかな? と首を傾げる。
「私とシグナム達みたいに、衣食住の面倒みての主、いうんと違うて」
「フェイトちゃんとクロノ君は、これをすれば兄妹って訳じゃないんだし。それを悩むクロノ君が変なんだよ」
本当だよ、という意味を込めてはのははフェイトを抱き締める力をちょっと強めにする。その気持ちが伝わったのか、フェイトはお腹の前で組まれたなのはの両手を上から包み込んだ。
「ありがとう、なのは、はやて」
「ううん、フェイトちゃん。はやてちゃんの言う通り、悪いのはこのパジャマの持ち主さんなんだから」
気にしなくていいんだよ、そう言うとなのはは、フェイトが着ている男物のパジャマの裾をギュっと抓った。それを見てはやてはこれこれとなのはを嗜めた。
「なー、なのはちゃん。あんまりパジャマに嫉妬するんはどーかと思うけど」
フェイトはもう一度俯いたが、今度は悲しみからではなく赤くなった顔をはやてから隠すためで。そんなフェイトの心情を知ってか、はやてが、それにしても、と話を薄っすら赤くなった顔のなのはに振った。
「私も『お兄ちゃん』はおらんから、ちょぉ気になるなー」
どんな感じー、と水を向ける。が一転、フェイトに頬ずりしていたなのはの表情が微妙なものになる。
「あれれ、ごめんな、変なこと聞いてしもたか?」
はやてのすまなそう声に、なのはがそうじゃないんだけど、と唸るような声を上げた。
「お兄ちゃんは強くて格好いいんだけど」
そこでなのはは言葉を切ると、天井を見上げ溜息をついた。
「女の人にだらしないというか、鈍すぎるというか」
言うだけ言うと力尽きたという感じで、ガクっとフェイトの肩にもたれかかった。なのはのだらしないという表現に気になったのか、井戸端会議っぽくはやてが身を乗り出す。
「だらしないっていうんと格好良いいうのは、逆な気ーするけどー」
はやての執拗な追求が感じ取れたなのはがしょんぼりと話し始める。
「お兄ちゃんは、お店の手伝いをしなくても済むようになった頃から、ちょくちょく旅に行ってるんだけどね」
「へー。旅行好きさんなんや」
はやての驚きの声に、なのはは、実態は武者修行であることと、し過ぎで留年している事実は伏せることにして先を続けた。友人の幻想を壊さないことも思いやりだと、自分を誤魔化しつつ。
「行った先からお手紙が届くの、毎回」
それもどうみても女の人の名前の手紙ばっかり、と呻いた。それを聞いたはやては、苦笑する。
「なんや、なのはちゃんの話を聞いてると、なのはちゃんのお兄さんって、恋愛ゲームの主人公さんみたいやね」
それを聞いたなのはは、言葉に撃ち抜かれたかのようにばったりと布団へとひっくり返った。なのは? と慌てて振り返るフェイトに、弱弱しく手を上げて答える。
「お姉ちゃんや忍さんすずかちゃんのお姉さんももそう言ってむくれるので、それ以上は許してください」
「ん〜、どないしよかなー?」
はやての愉しげな声にフェイトが懇願する。
「はやて、なのは本当に困ってるから……」
「んならしゃぁないなー。なのはちゃんを思うフェイトちゃんに免じて」
聞かんといてあげるー、とはやては笑う。その表現にフェイトが真っ赤になって俯き、それを気が付いたなのはがさらに真っ赤になる。それを見て、はやてはくすぐったそうに笑う。
「ほんならあんまり遅くまで起きてても良くないし、寝よか」
「そ、そうだね」
「う、うん」
ほな電気消すよー、の声にわたわたと並んだ布団に潜り込むなのはとフェイト。それを横目に次からは布団は一組でええかもー、とはやては苦笑する。
それでも結局。
パチリ、と電気が消える音がしても暫くの間部屋からは少女達の愉しげな声が聞こえ続けた。
Comment
あー…いーなーこう言う雰囲気。
お泊り会ってやつですな。うん。
まぁ、クロノもフェイト嬢も一本気で生真面目すぎるだけなんですけどね。
にしても恭也サン…アンタって人わ…
お泊り会ってやつですな。うん。
まぁ、クロノもフェイト嬢も一本気で生真面目すぎるだけなんですけどね。
にしても恭也サン…アンタって人わ…
Posted by: LNF |at: 2007/03/22 9:56 PM
こーいう雰囲気が良いと言って頂き恐悦至極。
と言うか、浅木原氏みたいな高みに至るには糖度が不足してるのを自覚した一本
誰か私にアマアマの実を(ぇ
と言うか、浅木原氏みたいな高みに至るには糖度が不足してるのを自覚した一本
誰か私にアマアマの実を(ぇ
Posted by: 伊織 |at: 2007/03/22 11:56 PM
ほほっほ〜
最初にフェイトの純粋な心を出しているところがイイですね。フェイトの純粋純白な感じが良く出ていて良いです
そして、なのフェイがイチャイチャベタベタしているだけでも私にとっては嬉しさ100倍なのに
はやてにからかわれると、二人で赤くなるというところが良いです!最高ですよ!嬉しさ200倍ですよ!
なのフェイは絶対的正義≧≦
最初にフェイトの純粋な心を出しているところがイイですね。フェイトの純粋純白な感じが良く出ていて良いです
そして、なのフェイがイチャイチャベタベタしているだけでも私にとっては嬉しさ100倍なのに
はやてにからかわれると、二人で赤くなるというところが良いです!最高ですよ!嬉しさ200倍ですよ!
なのフェイは絶対的正義≧≦
Posted by: とぅうふ |at: 2007/03/23 1:32 AM
こういうほのぼのした話は好きです
クロノはちょっと情けなさがいっそう強まった気がするけど、恭也はなんか今更って気がします
クロノはちょっと情けなさがいっそう強まった気がするけど、恭也はなんか今更って気がします
Posted by: 孝 |at: 2007/05/05 7:29 PM
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