ケーキより甘い思い出
2007.03.06 Tuesday | category:投稿&頂き物SS
「人が嫌がることをしちゃダメだよ、アリサちゃん」
かつてなのはに言われたこと。
−−そして、今改めてなのはに言われたこと
ことの発端は至極単純。翠屋のケーキを賭けてのゲーム。お題は「相手がビックリする話をすること」で。
参加者は私ことアリサ・バニングス、月村すずか、養子となり苗字が変わって間もないフェイト・T・ハラオウン、そして発案者である八神はやての4人。翠屋の自称看板娘の高町なのはは、店長の桃子さんに呼ばれてお手伝いの真っ最中。まぁ、当人も「今日は試作品を食べることになりそうだから……」と渋い顔で辞退しているんだけど。ここのケーキは美味しいし試作品だからって食べられるんだから渋い顔で言わなくても良い思うけど…………、そこは出す側の事情ってヤツかな?
今のところ、はやてはフェイトを、フェイトはすずかをビックリさせることに失敗して、すずかには悪いんだけども、私もどうやらビックリせずに終わりそうだ。
「今の話、私は結構ビックリしたけど、アリサは凄いね」
「あ〜ぁ。なんや、すずかちゃんならアリサちゃん、ビックリさせられると思ったんやけど」
はやてのがっかりした声。ごめんねー、とすずかが謝ってるのを脇目に、いよいよこの一手を打つ時がきた、と私はワクワクどころかニヤニヤするのをガマンするのに精一杯だった。
「さて、はやて。覚悟は良い?」
「お? なんやえらい自信満々やなアリサちゃん」
簡単には驚かへんでー、とはやては意気込んでいる。そりゃぁ、確かにシグナムさん達と会ったの以上にびっくりすることなんて早々と思っているだろうから、その余裕は頷ける。
「じゃぁ、行くわよはやて」
「かかってきぃ、アリサちゃん」
−−逢いたい
キミの声無しの僕の生活など耐えられない
「な、な、なんでアリサちゃんがそれを知ってるんや!」
はやての殆ど悲鳴に近い声と、フェイトの焦りきった声。
「あ、アリサ。ど、どうして知ってるの?!」
「ふっふーん」
久々の大当りに思わず胸を張って答えてしまうのは性だろうか?
「ちょっとしたツテってヤツよ。おっと、コレ以上は守秘義務があるから答えないわよ?」
チッチッチっと、これ見よがしに指を振ってみる。
−−危ない危ない。迂闊に喋っちゃったら、ここじゃ直にばれちゃう。念のためにキョロキョロと周りを見てしまうのは、悲しいかなあの人が怖いからだけど……
うん、さっき同様居るのは桃子さんとなのはだけ。OKOK、ばれてないばれてない。
「さて、言いだしっぺなんだから約束はキッチリ守ってくれるわよね? は・や・て」
「アリサちゃん、悪者さんみたいだよ?」
ついつい悦に浸っちゃったもんだから、すずかからダメ出しを貰うが、そんなものはこの喜びに比べれば小っちゃい小っちゃい。
−−……ねぇ、ねぇってば。ゆ、指だけじゃなくって
哀願が狭い部屋に響く。
指だけじゃなくって、どこを舐めて欲しいんだ? ユ
思わず次のフレーズを口走ろうとした私の頭を
ゴン!
とお盆が叩いた。
「痛っ!」
振り返れば、なのはが。結構怖い顔をして立っていた。滅多に見ない表情に、声を失う。
「ダメだよ。アリサちゃん」
「な、なにがよ、なのは」
「人が嫌がることをしちゃダメだよ、アリサちゃん」
なのはが言うには、私が知っているこの話は、なのはの仕事先でも結構な話題だったらしく、ユーノとクロノはウワサに翻弄されてクタクタになってしまったそうだ。
ユーノにいたっては、軽い人間不信に陥りかけたそうだ。
「ちぇ、分かったわよ。これ以上この話はしない。それでいいかしら?」
そこまで言われちゃ、こう言う以上方法が無いし、それを知ってて言うなのははズルイと思う。誤魔化しに髪を弄りながら、なのはにそう確認をとると、そこにあったのは満面の笑み。
答えなんて聞かなくても分かった。
「うん」
ほらね。
「さてと何を頼もうかしら?」
お茶を濁すようにメニュー表を開いてはみるが、内心まったく別のことを考えてしまう。
管理局なる仕事が警察官っぽい仕事だそうだが、なのはみたいに分かりやすくてそれで勤まるんだろうか、とたまに疑問になったりする。でもまぁ、フェイトとはやての笑い顔を見ると、勤まったからこの二人がここで笑ってるんだろうな、とも思うし。
そんなことを考えていると
「せや、嫌がることをするんはあかんよ、アリサちゃん」
と、ウンウンとはやてが頷いていた。
「なによ、急に」
いやな予感がビシビシとした。どうもはやては彼女の騎士達4人の面倒をみているせいか、たまに大人顔負けの返しをしてくる時があって、多分今回も。
「例えばやな」
「うん」
あぁ、すずか。そんな呑気に返事をしないの! 見かけは子供、中身は主婦なはやてに騙されちゃ という私の内心を他所に、予想通り爆弾を投下した。
「アリサちゃんとすずかちゃんに置き換えれば、どや?」
瞬間、頭に「チェシャ猫のにや〜っとした笑い顔」と言うフレーズが浮かぶほど、ステキな笑顔。私がこの仕込みのために本を隅から隅まで熟読し暗記しきっているのを前提にした切り返し。
−−逢いたい
ぅ
すずかの声無しの私の生活なんて 耐えられない
ぁ
−−……あ、アリサちゃん。ゆ、指だけじゃなくって
こ、これ以上考えちゃダメ! はやての思う壺になっちゃう!
哀願が狭い部屋に響く。
想像しないように、と考えてるハズなのに。思考はノンストップで。
指だけじゃなくって、どこを舐めて欲しいの? すずか?
ま、まともにすずかが見られない!
ちらっとすずかの方に視線をやると同じようにすずかも顔を真っ赤にしていて、一瞬視線があったと思うと体ごと向こうを向かれてしまった…………
「…………なんや、えらい効き目が出てしもたな」
「はやて。遣り過ぎだよ……」
さすがに気まずそうなはやてとフェイトの声が聞こえるが上の空だ。
頭の中は最早、覗かれたが最後な光景が繰り広げられていた。……多分、すずかも似たようなもんだろう。
「きゅ、急用を思いついたから、今日はここまでにしとくわ! それじゃ、なのは! ご馳走様」
全く支離滅裂なセリフを吐いて、席を立つ。
「あ、アリサちゃん、待って!」
赤面してたにも関わらず律儀にすずかが後からついてきてくれる。
後日この事に凄く救われるのだが、それは別の時に。
今は一刻も早くあの悪魔から逃げないと、とそれだけで精一杯だった。
「ほんま、ご馳走様や。アリサちゃん♪」
後ろからはダメ押しのはやての声。
なのはとフェイトの呆れたような声が聞こえるがどうでもよかった。
すずかの腕を掴むと逃げるように翠屋のドアを開け放つ。
一つの決意を胸にして。
「い、いつかぎゃふんと言わせるんだからーーーー!!!」
Comment
これはあのBL本が元になってるんですね。
BLは男性向けと違って制約が無いのかかなりすさまじい表現もあったりするんですけどアリサ嬢「意味も解った上で」全暗記してるんですかね?
だとしたら諸刃ですけど…
ちなみに最後の台詞は脳内できっちりくぎみーvoiceに変換されてます
BLは男性向けと違って制約が無いのかかなりすさまじい表現もあったりするんですけどアリサ嬢「意味も解った上で」全暗記してるんですかね?
だとしたら諸刃ですけど…
ちなみに最後の台詞は脳内できっちりくぎみーvoiceに変換されてます
Posted by: なのフェイ至上主義者 |at: 2007/03/06 9:38 PM
「ですかね?」と問われたので思わず、こうじゃないかな? ってのを一本書いてみました。
お楽しみいただければ幸いです。
最後となりますが、感想ありがとうございます。
では
お楽しみいただければ幸いです。
最後となりますが、感想ありがとうございます。
では
Posted by: 伊織 |at: 2007/03/08 12:05 AM
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