キミが歌うボクの歌
2006.06.28 Wednesday | category:なのはSS(フェイト×なのは)
なのはが買ったCDを、部屋で一緒に聴くことになったのだけど……。
1期のOPとEDが、なのはとフェイトのラブラブソングにしか聞こえなくなってしまったダメな脳が生んだSS。某ジャに怒られそうな仕様ですがとりあえず気にしない。
1期のOPとEDが、なのはとフェイトのラブラブソングにしか聞こえなくなってしまったダメな脳が生んだSS。某ジャに怒られそうな仕様ですがとりあえず気にしない。
「あ、あったあった」
放課後、なのはと一緒に私はCDショップに寄り道していた。なのはが欲しいCDがあるのだという。
ゆったりとしたBGMの流れる店内で、なのははお目当てのCDを見つけたらしく、嬉しそうにレジへと駆けていく。
「……CDかぁ」
音楽を聴く習慣が無いので、CDショップというのはあまり馴染みのない空間だった。
私は目の前にあった棚から、試しに1枚抜き出してみる。派手な格好の女の人がポーズを決めている写真。……よく解らない。
何気なく値段を見て驚いた。私の1ヶ月のお小遣いじゃ全然足りない。アリサやすずかならともかく、なのはは私とそんなに変わらないはずだ。
レジでは、なのはがポケットからお財布を取り出そうとしていた。
……なのはが好きな音楽って、どんなものだろう。
こんなお金を出すぐらいだから、相当なのはのお気に入りのものなのは間違いないと思う。
なのはの好きなものなら、聴いてみたいな。……そう思った。
「お待たせー」
ぱたぱたと、なのはが戻ってくる。手にはCDの入っている袋。なのははそれを大事そうに鞄にしまった。
店を出て家への道を歩きながらも、なのははしきりに鞄を気にしていた。CDが気になるんだろう。
「ねえ、なのは」
「なに?」
「……そのCD、私も聴いてみたいんだけど、いいかな?」
私がおそるおそるそう切り出すと――なのはは、満面の笑顔で、
「うんっ」
そう、頷いた。
◇
そんなわけで、なのはの部屋。
「この間、テレビで聴いて、すごく気に入っちゃったんだ」
CDを取り出しながら、なのはが言う。そういえば最近、なんだか鼻歌をよく歌っていたけど……
「フェイトちゃんも、気に入ってくれると嬉しいな」
セット完了、とラジカセの蓋を閉めて、ベッドに腰掛けた私の隣に、なのはは腰を下ろす。
ぴったり触れたなのはの肩と、髪の匂いに、ちょっと鼓動が高鳴った。
「それじゃ、流すよ」
リモコンの再生ボタンを、なのはが押す。静かな音をたててCDが回りだし、曲が流れ始める……
膝を抱えて部屋の片隅 いつも不安で震えてた
「本当」を知ることが怖くて トビラを閉じた
――胸を突かれたような、気がした。
流れ出した旋律に乗せて、伸びやかな声が紡ぐ言葉に。
……これは、まるで。
優しい嘘に居場所を見つけて 夢の中に逃げ込んだ
「――フェイトちゃん?」
目を閉じ聴き入っていたなのはが、不意に声をあげた。
「ど、どうしたの?」
「え……」
驚いたようななのはの声で――私は、自分が泣いていることに気付く。
「あ、あれ……?」
おかしい、どうしてだろう……なぜだか、この歌を聴いていると、涙が……止まらない。
誰も知らない孤独の海を 深い蒼に染めてく
ああ――これは、まるで、私なんだ。
流れ込んでくる歌詞に、私は納得する。これはまるで、私だ。――なのはと出逢う前の。出逢った頃の。
部屋の片隅で、ひとりぼっちでいた。母さんが私を必要としてくれているという、夢に逃げていた頃。
――母さんが私を必要としていないという、本当のことから目を逸らし続けていた、孤独の日々。
寂しさ隠す一途な想い 君のココロを傷つけている
「……泣かないで、フェイトちゃん」
不意に、耳元で囁かれる……なのはの言葉。
それから、温かくて湿った感触が、頬をなぞった。
――なのはが、私の目元からこぼれた雫を、舐め取っている。
頬に触れる、柔らかななのはの唇。
その感触に、心がなんだか、あったかくなる。
「ん……ごめんね、なのは。私は、平気だよ」
ただ、少し……悲しいことを思い出してしまっただけ。
けれどそれも、すぐ隣にある彼女の温もりが、溶かしてくれるんだ。
「なのは……」
私はなのはの頬に手を伸ばす。はにかんだなのはの唇には、まだ私の涙の味が残っているのだろうか。
……それを確かめたかったわけじゃないけど、私はなのはの唇に、そっと自分のそれを重ねる。
「ん……」
なのはの腕が、私の首に回された。流れ続ける歌の中に、ベッドが少し軋む音が混じる。
――と、ほんの僅かで、なのはの方が唇を離した。目を開けた私に、なのはが囁く唇の動きが見える。
それは。
「ずっと側にいるから……」
口ずさむようななのはの言葉。それは、流れてきた曲の歌詞と重なって。
――ねえ、なのは。ひょっとして……この歌詞だから、この曲がお気に入りなのかな。
そんな言葉は、だけど訊ねることに意味はなかった。
私は、なのはの囁きの返事として――もう一度、唇を重ねる。
……私も、ずっと側にいるよ。
そんな想いを、いっぱいに込めて。
Comment
つい最近なのはを全話観てからなのフェイにはまってしまいました。ここのssはとてもいいですね。自分もこの歌がこの二人の歌にきこえます。今度この曲でMADを作ろうと思うので出来上がったら是非観てくださいね。これからも頑張ってください。
Posted by: 暇人 |at: 2007/10/17 3:24 AM
つい最近浅木原さんの短編SS集を購入してこのサイトを知りました(笑)時間を見つけては読ませてもらっているのですが、本当にいいお話ばかりです♪このお話も読み進めていくうちに目頭が熱くなってきてしまいました・・・(照れ)これからも頑張って下さいね♪ (^O^)ノシ
Posted by: 綺堂楓華 |at: 2009/02/09 10:29 PM
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