みんなで奏でるボクの歌
2007.02.25 Sunday | category:投稿&頂き物SS
再びmattioさんからいただきました〜。なのフェイ&アリすずSS第2弾。
ウチの「キミが歌うボクの歌」とリンクしてますよわっほー! そしてウチのより出来がいいですよ! なんてことだ! 素晴らしいです!
ウチの「キミが歌うボクの歌」とリンクしてますよわっほー! そしてウチのより出来がいいですよ! なんてことだ! 素晴らしいです!
どうしてだろう。
なのはの顔をまともに見れなくなった。
嫌いになったわけじゃない。
むしろ、その、すごく綺麗になった…と思う。さらに可愛くなったと思う。
そう、近頃なのはは女の子として魅力が増したような気がする。
だから――怖い。
だから―――。
フェイトちゃんの様子がおかしい。
私と目が合うと、すぐ目をそらす。
違う。フェイトちゃんだけじゃない。
私もつい目をそらしちゃう。
フェイトちゃんが……素敵過ぎて。
アリサちゃんに聞かれたら、きっとまた呆れられちゃうよね。
もともとそうだったけど、最近になってフェイトちゃんはもっと大人びた女の人になっちゃったみたい。
将来について話すときのフェイトちゃんは、私なんかよりずっと輝いてて。
だからかな――怖いよ。
だから―――。
確かめ合いたいな――――。
7月某日――。
ある学校の屋上にて。
「楽器をやってみたいのよね」
抜群のリーダーシップと。
「おもしろそうやね。私も興味あるわ」
抜群のノリのよさと。
「バンド組んでみたらもっと楽しくなるんじゃないかな?」
抜群のフォローで。
「バンド?」
「えっと、一つの曲をいろんな楽器を使ってみんなで演奏する人たちのこと、かな」
「一つの曲を…みんなで?えと…なんだか、楽しそうだね、なの…は…」
「あ…」
目が合った。なのはと。
「―でしょ?じゃあとりあえずバンドのメンツは決まりねっ!」
「「え?」」
「なのはちゃんもフェイトちゃんも、今更野暮な質問はせんといてな。こういうのはテンポが大事や」
「楽器の心配はしなくて良いわ。私がそろえとくから」
「さすがアリサちゃんや」
「これで練習もできるね」
「にゃはは…」
「あぅ…」
―ひとつのバンドが誕生した。
「アリサちゃん、メンバーが決まったなら楽器の担当を決めないと」
「アリサちゃんは何の楽器をやりたいんや?」
「演奏する曲にもよるんじゃない?アリサちゃんはどんな曲を弾きたいの?」
「実はもう担当も曲も決めてあるの。きっとみんな賛成してくれるだろうと思って」
そう言ってアリサは一枚のCDジャケットをみんなに見せた。
「あ…これ…」
「あ……」
前になのはと一緒に聞いた曲…
「フェイト?何急に赤くなってるのよ」
「あ…えと――なんでも、ない」
ドキドキが止まらない。
ずっと側にいるから……
その一言がフェイトの頭の中でリピートされて停止がかからない。
「それで担当なんだけど、私はギターをやりたいのよね」
「うん、アリサちゃんは派手目なのが合ってる気がする」
「ハードロックとか?」
「なのはちゃん、この曲ハードロックちゃうやろ」
「ナイスツッコミね、はやて。そんなアナタにはドラムをやってもらいたいの」
「ツッコミだから?」
「どういう理屈や」
「ドラムは嫌?」
「別にええよ。正直言うとまだ脚に負担かけたくないんよ」
「じゃ決まり。で、すずかはベース。なのフェイよりも向いてると思うわ」
「なの、ふぇい?」
聞きなれない単語。
「私たちのこと?」
「他に誰がおるんや」
今日はいつもよりツッコミどころが多い。
はやてが苦笑する。
「ふふ。もちろんオッケーだよアリサちゃん」
二つ返事で了承。
「よし。そして、なのフェイだけど」
「「うん」」
ハモった。
「後残ってるのはボーカルとキーボードなんだけど」
「「うん」」
またハモった。
すずかとはやてが含み笑いしてる。
アリサは無視を決め込んだ。
「フェイトにキーボードを弾いてもらいたいの」
「じゃあ私が歌うの?」
フェイトがキーボードならなのはが歌うのは必然。
「そう、フェイトと一緒にね」
「「え?」」
「前のお花見のときの歌声を思い出してピンと来たの。フェイトの声がこの曲にピッタリだって」
フェイトの歌唱力は先のお花見で誰もが確認済みだ。
「フェイトちゃん、歌上手だもんね」
「じゃあなのはがキーボードを…」
「この曲、二人で歌っても変じゃないから。交互にベタベタ歌うと良いわ」
可否を問わせない。アリサのリーダーシップがにじみ出ていた。
「よかったね。なのはちゃん、フェイトちゃん」
「アリサちゃんがベタベタして良いて、明日は次元震でも起こるんとちゃうか」
「あ…あはは…」
「うぅ……」
互いの手前、嫌とは言えない。
―嫌ではないのだけれど。
「うん…」
「頑張って、みるよ…」
「優しいね、アリサちゃん」
「何がよ」
「わかってるくせに」
「ふんだ。イチャイチャしてたと思ったら急にギクシャクしだして。気持ち悪いのよ」
「きっと、うまくいくよね」
「当たり前でしょ」
あの二人だもん――。
「はぁ…」
自室に戻るなり、なのははため息をつく。
「何でよりによって、こんなときに――」
―でも、やるからには全力全開。
あまり歌とか歌ったことないけどみんなを、フェイトちゃんをがっかりさせたくないのはホントだから。
「はぁ…」
「フェイト?ため息なんかついて、何かあったのかい?」
使い魔の前でも滅多に弱気を見せない主の姿に、アルフはやや動揺する。
「うん、また歌を歌うことになったんだ…」
「歌?それがそんなに嫌なのかい?フェイトは歌上手いんだからへっちゃらじゃないか」
何を鬱になる必要があるのか。
「それが、なのはと歌うんだよ」
ますます分からない。いつものフェイトなら照れつつも喜ぶはず。まさか、考えたくはないが。
「ケンカでもしたのかい?」
「ううん、ごめんね心配かけて。どうかしてたよ」
そうだ。何を落ち込む必要がある。私となのはがどうにかしたわけでもないのだから。
これを機会にもっと仲良くなろう。
「「うん、がんばろう―――!」」
そして、演奏当日――。
アリサは以前花見を行った場所、それも十五夜に照準を合わせた。
いわばお月見ライブ。
「ついにきたわね、この日が」
「す、すごい人数だね…」
フェイトの顔が引きつる。
「お花見の参加者全員に加えて、局の人らにも声かけたからなぁ」
局入りしてから3人はさまざまな人と交流を図ってきた。
もちろんエイミィの手回しもあったのだが。
お花見のときの3倍の人数はいそうである。
ステージ衣装には学校の制服を選んだ。これが私たちのベストスタイルよ!とアリサは胸を張る。
お月見と題した飲み会はお花見のとき同様、終始和やかに進んだ。そして宴も酣、いよいよライブがスタートする。
スポットライトがすずかを、はやてを、アリサをそしてフェイトを照らし出す。
それぞれが静かに、穏やかにこれまで積んできた成果を発揮し始める。
そして、瞳を閉じているフェイトの小さな唇から詩が紡ぎだされると参加者全てがその声に惹き込まれ―。
膝を抱えて部屋の片隅 いつも不安で震えていた
―不思議と歌に気持ちがのめりこんでいくのを感じる。
この詩はまるで前の私そのものだから―。
はやての高いドラム音と同時に、照明が誰もいないはずのステージ端を照らす。
そこにツインボーカルの片割れが、なのはがいた。
寂しさ隠す一途な想い 君のココロを傷つけている
なのはが歌いながらステージ中央へと進み出る。しかし、その身体と目線はずっとキーボーディストへと向けられていた。
なのはの歌声は単なる歌としてではなく誰かに呼びかけるような、感情のこもった優しい囁きだった。その誰かとは、一目瞭然だったが。
そして…。
「ず っ と そ ば に い る か ら ――――」
…なのはのパートが続く。
キーをたたくのを忘れてしまいそうな、ココロに直接響く歌声。
けれど、一方で指は驚くほど冴えていて。
なのはの「全力全開」を、台無しにしたくなかったから。
―フェイトちゃんが見てる。私に一番近い場所で。
―やっと分かった。自分の気持ち。
もしかして、アリサちゃんは私たちのためにこの曲を選んだのかな。
言葉にしなきゃ伝わらないこともある。でも、言葉にしなくても伝わることもきっとある。
だから私の気持ちを、ありのままの気持ちを。
世界にたった一人だけの。
キミの元へ―。
「つ た え た い ――――――」
――伝わったよ、なのは。
なのはも私と同じだったんだね。
今のなのはを見ればわかるよ。
なのはのことだから。
なのはが手拍子してる、私の大好きな笑顔で。
私も伝えるよ、もっと笑顔を見せて欲しいから。
そして、あの日のように―。
「わ ら い か け て ――――――」
「アリサちゃん、今度は私たちで歌おうね」
未だおさまることない拍手喝采の中ですずかが密談を投げかける。
「ま、まあ担当固定する必要はないから、たた、たまにはいいんじゃないの」
「そうやな、じゃあすずかちゃん、私とのデュエットも考えといてな」
「な!ダメよッ!!」
「なんでや?」
「な、なんでってそれは…」
「「それは?」」
『――ッすずかと言ったら、私だからよ!!!』
…………
大音響。
みんなの注目が抱き合う二人から私たちへと移る。
―アレ?私こんなに声でかかった?そんなはずない。これはまるで――。
視線を下に向けてみる。
…はやてがいる。マイクを私に向けてにやけてる、はやてが。
まったく真夏だってのに、何でこんな熱い目にあわなきゃいけないのよっ。
『ばかち――ん!!!』
2度目の大音響が辺りに轟いた。
「………」
「お、お父様…」
「心中、お察しいたします…」
「―なぜ私は呼んではもらえんのだ」
Comment
素晴らしいです!歌にのせてなのはとフェイトの固く確かな絆、この2人の絆はずっと変わることはないです。
アリサもはやてに見事してやられましたね、そしてグレアムさんお察しします・・・
教習もとりあえず一段落しましたし、これから作成に集中できます
アリサもはやてに見事してやられましたね、そしてグレアムさんお察しします・・・
教習もとりあえず一段落しましたし、これから作成に集中できます
Posted by: 鴇 |at: 2007/02/25 8:22 PM
>「なんでや?」
さすが師匠,あるいみ誘っているとしか言いようの無い。 なのはとフェイトのそれぞれすれ違っているようで同じことをしているところがおもしろかったです。しかし、グレアムさんはやっぱりこういうやり場しかないですかな?
さすが師匠,あるいみ誘っているとしか言いようの無い。 なのはとフェイトのそれぞれすれ違っているようで同じことをしているところがおもしろかったです。しかし、グレアムさんはやっぱりこういうやり場しかないですかな?
Posted by: mayu |at: 2007/02/25 9:27 PM
>鴇さん
このssのきっかけはお察しの通り、イノスタのデュエットが聞きたい、いっそ五人いるからバンドをという願望と妄想から生まれました。
私の中でアリサ弄りにははやてがよく浮かびやすいんですよ。そちらもss頑張ってくださいw
>mayuさん
私の脳内でははやてはそういう立ち位置にいます。なのフェイもすれ違ってるようで破局にならないバカップルを出したかったもので…。
…彼に関してはss締めるいい言葉が浮かばなくてどうしても苦し紛れにああやって出してしまうんですよね、申し訳ないorz
さすがにもうやりません、多分(苦笑)
このssのきっかけはお察しの通り、イノスタのデュエットが聞きたい、いっそ五人いるからバンドをという願望と妄想から生まれました。
私の中でアリサ弄りにははやてがよく浮かびやすいんですよ。そちらもss頑張ってくださいw
>mayuさん
私の脳内でははやてはそういう立ち位置にいます。なのフェイもすれ違ってるようで破局にならないバカップルを出したかったもので…。
…彼に関してはss締めるいい言葉が浮かばなくてどうしても苦し紛れにああやって出してしまうんですよね、申し訳ないorz
さすがにもうやりません、多分(苦笑)
Posted by: mattio |at: 2007/02/25 9:54 PM
うう…感動しました…
やっぱなのフェイはこうでないと!
意識しすぎてすれ違いになりかけるも、そこはそれ。
かけがえのない友人たちがちゃんと助けてくれる。
愛情と、友情。恵まれてこその二人です。
そして、ここでもナイスグッジョブなはやて師匠。
さすが未来の機動六課長サマです。こういう人は決して敵に回したりましてや逆らってはいけません。粛々と従いましょう(苦笑)
そしてオチ担当はあの御仁ですか…
まぁ、先の闇の書事件の事のことを考えれば…ねぇ?(笑)
すばらしいSSをありがとうございました。
やっぱなのフェイはこうでないと!
意識しすぎてすれ違いになりかけるも、そこはそれ。
かけがえのない友人たちがちゃんと助けてくれる。
愛情と、友情。恵まれてこその二人です。
そして、ここでもナイスグッジョブなはやて師匠。
さすが未来の機動六課長サマです。こういう人は決して敵に回したりましてや逆らってはいけません。粛々と従いましょう(苦笑)
そしてオチ担当はあの御仁ですか…
まぁ、先の闇の書事件の事のことを考えれば…ねぇ?(笑)
すばらしいSSをありがとうございました。
Posted by: なのフェイ至上主義者 |at: 2007/02/26 12:33 AM
〉なのフェイ至上主義者さん 携帯からで失礼します。最初はいい話にするつもりはなかったんですけどねwどうやら私はこういう傾向が好きみたいです。御仁についてはいい話で終わらせるのが恥ずかしくてつい(笑)照れ隠しなんです(苦笑)で、今度書くとしたら前2作よりもっと軽く読めるのを書きたいです、傾向の違った。なので、そんときは見捨てずお付き合い下さい(笑)
Posted by: mattio |at: 2007/02/26 9:26 AM
いいですね!なんといってもノリが。
アリサのキレ突っ込みもいいですが、はやて師匠が入るとさらにテンポがよくなるというか。
なのフェイもすれ違いつつもやっぱり息の合った二人、といった感じでとても楽しめました。
アリサのキレ突っ込みもいいですが、はやて師匠が入るとさらにテンポがよくなるというか。
なのフェイもすれ違いつつもやっぱり息の合った二人、といった感じでとても楽しめました。
Posted by: |at: 2007/02/26 12:55 PM
〉12:55コメントの方 携帯から失礼しますw楽しんでいただけたとのこと、感激です!こうして皆様からコメントいただくとすごく元気がでます!SSやめられないわけですよ、まあ浅木原さんの良心につけこんで自分勝手に書きたいこと吐き出してるだけのSSですが、懲りずに読んでやって下さいw
Posted by: mattio |at: 2007/02/26 2:38 PM
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