好き、だから
2007.02.14 Wednesday | category:投稿&頂き物SS
なんとpure heartのkitさんからSSをいただきましたー。ありがとうございます!
バレンタインでなのフェイネタの、アリサ&フェイトSS。アリサさんがとても素敵です。
これでウチのバレンタインSSが中止になった分は充分すぎるほど埋まりました!
バレンタインでなのフェイネタの、アリサ&フェイトSS。アリサさんがとても素敵です。
これでウチのバレンタインSSが中止になった分は充分すぎるほど埋まりました!
今日は二月十四日。
バレンタインデー。
女の子がチョコレートに想いを込めて、好きな相手にプレゼントする日。
「はい、なのはちゃん」
「ありがとー」
放課後の教室で、高町なのはは同年代の少女達に囲まれ、プレゼント攻勢を受けていた。
「相変わらず人気者よね、なのはって。……まあ、あたしほどじゃないけど」
アリサ・バニングスが独りごちた。
人混みと喧騒を避け、遠巻きに見守っている。
「……そうだね」
傍らのフェイト・T・ハラオウンが小さくうなずく。
その手には、丁寧にラッピングされた小さな箱が握られていた。
「あと五分はかかりそうだわ」
そう言って、アリサは肩をすくめた。
今日は五人揃って帰る約束だったから、なのはが解放されるまで待ちぼうけだった。
「ねえ、アリサ」
「なによ」
「一つ訊いてもいいかな?」
改まった様子で問い掛ける。
「……別にいいけど?」
アリサはフェイトの方に向き直った。
フェイトは根が素直なだけに、アリサの想像の域をはるかに超える発言がその口から飛び出すのは、格段珍しい事ではなかった。
どう出られても、決してたじろいだりしないように、心の中で身構え次の言葉を待つ。
「アリサはなのはのことが好きなのかなって」
「……………………」
アリサは絶句した。
「…………な、な、ななな、何言い出すのよあんたはっ!」
やっとのことで、そう切り返す。
「えと、その……ごめんなさい」
しゅんとうなだれるフェイト。
「別に好きじゃないわよ」
アリサはぷい、とあさっての方を向き、ぶっきらぼうに告げる。
「じゃあ、嫌いなんだ」
「嫌いって訳でもないけど」
勘違いされるのもシャクだったから、否定してみせる。
「じゃあ、アリサはなのはのこと、どう思ってるの?」
「……はぁっ……」
アリサは肩を落として、深々と溜息を吐いた。
「フェイトって、ヘンに大人びてるくせに、そのくせどこか子供っぽいところがあるわね。――まあ、それってなのはもだけど」
「あ、うん。よく言われる……かな」
「好きの反対は嫌いじゃないし、好きってのにも色々あるワケよ」
好きと嫌いは似たもの同士。
その対極は無関心なんじゃないかと、アリサは考えるけれど、フェイトの前であえて口にはしない。
フェイトの頭の中がぐるぐるになられても困るから。
「どーしてそんなこと思うわけ?」
アリサとしてはもっともな疑問である。
「わたしとなのはが一緒にいるときに、アリサがよく怒ってたから」
「はぁ?」
本気で呆れるアリサ。
「わたしもね、なのはが他の子と仲良くしてるのを見ると、何だか胸の奥が……こう、ちりちりとして、嫌な気分になるの」
フェイトが小さな手のひらを左胸に添え、自分の気持ちを訴える。
「ははぁー」
アリサはようやく溜飲を下げた。
「ヤキモチね、それって」
ずびしっ!
――と、指を突き付けた。
「焼き餅?」
フェイトは一月ほど前に食した、火を加えるとぷっくりと膨らむ、白い食べ物を思い出す。
「ストレートに言うなら『嫉妬』ね」
フェイトの勘違いに気付き、アリサが言い直す。
「……嫉妬」
それならば、フェイトにも意味が分かった。
「そうか、わたし――嫉妬してるんだ」
静かな声で呟く。
フェイトの声色が余りに冷たく感じられ、アリサは自分がたじろぐのを禁じ得なかった。
「…………」
なのはが聞いたなら、まだ出会ったばかりの頃のフェイトの姿を思い出したに違いなかったが、アリサには知る由もない。
「わたしがこんな気持ちになってるって知ったら、なのははきっと悲しむよね……ううん、わたしのこと、嫌いになっちゃうかも」
自己嫌悪に落ち込むフェイト。
「――あたしは」
面と向かって、アリサは告白した。
「あたしは昔、あんたに嫉妬してたの」
「アリサ?」
その言葉に驚き、フェイトは顔を上げる。
「あたしとなのは、すずかは一年生の頃からずっと親友だった。だけど、あたし達三人がバラバラに、離れ離れになりそうになった事があった。たった一度だけ。――フェイト」
「うん」
「なのはがあんたを助けようとしたときよ」
「……そう、なんだ」
プレシア・テスタロッサ事件。
数多くの出会いと別れ、そして始まりをもたらしたもの。
「だからあたしは、ちょっとだけフェイトのことを嫉妬してたの。なのはがフェイトと友達になりたいって、その想いで頑張って、最後までやり遂げて。初めてフェイトのことがなのはの話に出たときも、すごく嬉しそうで、楽しそうだった。――なのはが良く知らない子に取られてしまったような気がしちゃってたんだろうな、きっと」
一度言葉を切り、目を閉じて当時を回想する。
そして続ける。およそ一年半前の昔話を。
「だけど、ずいぶん長い間ビデオメールを何度もやり取りして、こっちの世界で逢ったときには、そんなちっぽけな気持ちはどっかに行っちゃってた。だってなのはが本気で友達に――好きになった子なんだもの。悪いヤツなワケ、ないじゃない」
「……アリサ」
「今思うとホント、バカみたいよね。まったく」
昔の自分を自嘲し、アリサは告白を終えた。
「ありがとう、アリサ」
「で。フェイトに一つ訊くけど」
「うん」
「あんた、なのはのこと好きなんでしょ?」
「……うん」
フェイトはゆっくりと、大きくうなずいた。
「好きでもなんでもない相手が何をしようと、嫉妬なんてしないし、ましてやヤキモチなんて焼くはずもないわよ」
「……あ、うん。分かるよ」
しばし考え込んだ後、フェイトは同意した。
「自分が好きな相手がヤキモチ焼いてくれるんなら、嬉しいと思うけどね。少なくとも、あたしはそう」
「そう……だね」
「外ではなのはと、家ではリンディさんと一緒じゃ、甘々になるのは分かるけど」
アリサは、ぽんとフェイトの肩に手を置く。
「苦さとか胸の切なさとかも、恋のスパイスには必要なの。せいぜい楽しむ事ね」
そして、アリサはウインクして見せた。
「えっと……じゃあ、アリサはなんで怒ってたのかな?」
フェイトは改めてアリサに聞き直す。
「あんたたちがイチャイチャ、ベタベタしてるのを見てると……こう、全身から力が抜けちゃうって言うか、居ても立ってもいられない気分になるって言うか」
「……はぁ」
「お互いにボケるばっかりでツッコミがない漫才を見てる気分って言うか」
「嫉妬なんかじゃないと?」
「あったり前でしょ。だいたい、あんた達の間のどこに割って入る隙間があるって言うのよ! スライムみたく癒着してるわよ、まったく」
フェイトの頭の中で、黄色と桜色のゼリー状の物体が、境界線で解け合って一つになる光景が思い浮かんだ。
「褒められてるのかな? それとも貶されてるのかな?」
「さあ、どっちかしらね」
その両方だったりする。
「ねえ、アリサ。もう一つ訊いてもいい?」
「もったいぶってないで早く言いなさいよ」
そう言ってアリサは急かした。
「アリサって、好きな子とかいるの?」
「あたし? あたしが好きなのは――」
言いかけたアリサの前に、
「フェイトちゃん、アリサちゃん、お待たせー」
「お待たせしましたー」
「やっと終わったで」
なのは、すずか、はやてが現れる。
「…………」
口をぽかんと開けたまま、アリサが固まった。
「すぐに帰り支度するから、ちょっとだけ待っててね」
「うん」
なのはは自分の席に戻ると、両手に抱えたチョコレートの山を用意していた紙袋に入れた。
「あ、フェイトちゃんには後で渡したいものがあるから、ゴメンだけど家まで寄ってくれる?」
「うん、いいよ。帰る方向は一緒だしね」
なのはのお誘いを、迷うことなくフェイトは受けた。
「それって、フェイトちゃんの?」
なのははフェイトが手にしたそれを指さした。
「わわ……っ」
慌ててフェイトはプレゼントの包みを後ろ手に隠したが、もう遅い。
「にゃははっ。じゃあ後で、だね」
「……うん」
赤くなったフェイトが、こくこくと首を縦に振った。
「学校に持ってこられへん、てことは。さてはなのはちゃん、生やな?」
「あ、うん。すごいね、はやてちゃん」
はやての推測を肯定した。
生チョコレートは冷蔵が必要な為、学校へは持ってこられない。保冷袋にドライアイスを入れても半日が限界だ。
なのはがフェイトの家まで遊びに行っても良かったのだが、これ以上待たせるのもはばかられるため、立ち寄ってもらうことにしたのだった。
「うちらは生とちゃうかったのになぁ。やっぱフェイトちゃんは特別なんやな」
「にはは。みんなには悪いけどね」
なのはは苦笑いする。
「……あ。フェイトちゃんが赤うなっとる」
はやてとなのはのやり取りを耳にしたフェイトがきれいに茹で上がっていた。
「アリサちゃん、大丈夫?」
「……な、何でもないわよ……」
「顔真っ赤だよ?」
すずかが心配そうな様子でアリサを見つめる。
「平気だってば」
アリサは足を一歩後ろに踏み出し、すずかと距離を置いた。
「そう? なら、いいんだけど」
「アリサが好きな子って誰なのかな?」
ようやく我に返ったフェイトが、思い出したかのようにアリサに尋ねた。
「ホントに?」
「めっちゃ気になるなー」
「えっ、だれだれ?」
アリサはあっという間にすずか、はやて、なのはに取り囲まれる。
「……ゴメン、アリサ」
フェイトが気が付いたときには、もう手遅れだった。
「男の子? それとも女の子かな?」
「もしかして、もしかせんでも、うちらの中におったりしてな」
「えーっ。わたしだとちょっと困っちゃうかも」
「あーもう! うるさい、うるさい、うるさーい!」
追い詰められたアリサが逆ギレして、怒りを爆発させたのだった。
Comment
>焼き餅
フェイトちゃんの素直な反応がうけましたねー。
>大阪
流石突っ込み役,反応速度,質ともどもよかったですね。
ちなみになのははあくまで生チョコだからだよね,ドライアイスと生チョコの溶ける速度を計算に入れて・・・,妄想が深まるネタありがとうございます。m__m
フェイトちゃんの素直な反応がうけましたねー。
>大阪
流石突っ込み役,反応速度,質ともどもよかったですね。
ちなみになのははあくまで生チョコだからだよね,ドライアイスと生チョコの溶ける速度を計算に入れて・・・,妄想が深まるネタありがとうございます。m__m
Posted by: mayu |at: 2007/02/15 11:35 AM
>「あーもう! うるさい、うるさい、うるさーい!」
ナイス釘宮!
ナイス釘宮!
Posted by: 草餅 |at: 2007/02/15 11:28 PM
なのはのチョコは生。
と、いうことは体に塗ったチョコをフェイトに舐めさせ・・・初めてのコメントがこんなんでごめんなさい。
しかも前に出した本とネタ被ってますね。二重にごめんなさい。
と、いうことは体に塗ったチョコをフェイトに舐めさせ・・・初めてのコメントがこんなんでごめんなさい。
しかも前に出した本とネタ被ってますね。二重にごめんなさい。
Posted by: ハロ |at: 2007/02/16 2:58 AM
どうも、SS書かせていただきましたkitです。
コメントありがとうございました!
mayuさん
>>焼き餅
>フェイトちゃんの素直な反応がうけましたねー。
アリサとフェイトなので、いつもより多めにぽやぽやさせてみました。
>>大阪
>流石突っ込み役,反応速度,質ともどもよかったですね。
kitはネイティブ関西人なのですよー。
草餅さん
>>「あーもう! うるさい、うるさい、うるさーい!」
>ナイス釘宮!
アリサっぽいシメを考えたらこんな台詞に(笑)
>なのはのチョコは生。
>と、いうことは体に塗ったチョコをフェイトに舐めさせ・・・初めてのコメ
ントがこんなんでごめんなさい。
「ほら、フェイトちゃん。生なのはの生チョコがけだよー」
「な……なのは?」
「もちろん、フェイトちゃんだけのスペシャルメニュー。お召し上がりはお早
めにね」
「な、なのはーっ!」
「んもう、そんなに慌てなくても、なのははずっとフェイトちゃんのそばにい
るから、安心して良いよ」
何このなのフェイ妄想は(ぉ
>しかも前に出した本とネタ被ってますね。二重にごめんなさい。
フェイトちゃんを生クリームでデコレーションした覚えが……
浅木原さん
浅木原さんの「アリサかわいいよアリサ」ぶりには正直引き……もとい、感
動しました。これからは認識を改めさせていただきます(ぉ
あと14日の23:50とかゆー日付変更目前に、これまた何の予告もなく送りつ
けてスミマセン(苦笑)
コメントありがとうございました!
mayuさん
>>焼き餅
>フェイトちゃんの素直な反応がうけましたねー。
アリサとフェイトなので、いつもより多めにぽやぽやさせてみました。
>>大阪
>流石突っ込み役,反応速度,質ともどもよかったですね。
kitはネイティブ関西人なのですよー。
草餅さん
>>「あーもう! うるさい、うるさい、うるさーい!」
>ナイス釘宮!
アリサっぽいシメを考えたらこんな台詞に(笑)
>なのはのチョコは生。
>と、いうことは体に塗ったチョコをフェイトに舐めさせ・・・初めてのコメ
ントがこんなんでごめんなさい。
「ほら、フェイトちゃん。生なのはの生チョコがけだよー」
「な……なのは?」
「もちろん、フェイトちゃんだけのスペシャルメニュー。お召し上がりはお早
めにね」
「な、なのはーっ!」
「んもう、そんなに慌てなくても、なのははずっとフェイトちゃんのそばにい
るから、安心して良いよ」
何このなのフェイ妄想は(ぉ
>しかも前に出した本とネタ被ってますね。二重にごめんなさい。
フェイトちゃんを生クリームでデコレーションした覚えが……
浅木原さん
浅木原さんの「アリサかわいいよアリサ」ぶりには正直引き……もとい、感
動しました。これからは認識を改めさせていただきます(ぉ
あと14日の23:50とかゆー日付変更目前に、これまた何の予告もなく送りつ
けてスミマセン(苦笑)
Posted by: kit |at: 2007/02/16 9:05 PM
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