『黄昏の百合の色 少女秘封録』特設ページのようなもの
2006.04.27 Thursday | category:-
著:浅木原忍
表紙:海の山
挿絵:しぷっ、ヤンマーソン、夏雪
発行:Rhythm Five
文庫版/172ページ/イベント頒価700円/書店価格1050円(税込)
2013年8月12日(月) コミックマーケット84(3日目)
東1ホール・F-38a「Rhythm Five」にて頒布
とらのあな・メロンブックスにて委託販売予定
「メリーの夢の世界を、見つけたんだわ!」
夢の中に現れた宇佐見蓮子は、目覚めたとき、メリーの手を掴んでそう言った。
メリーにしか視えないはずだった、《境界》の向こう側の世界。そのビジョンを、メリーの視る夢を、蓮子は共有したのだという。
――かくして、蓮子による、幻想の観測実験が始まった。
その実験に振り回される日々の中で、メリーはまた、蓮子とともにいくつかの小さな謎たちと出会う。
朝夕で違うランドセルを背負う少女。
博麗神社に現れた陸上部員の抱える想い。
そして、ふたりの友人の失踪事件。
主観という、他者へ開くはずのない鍵に閉ざされた想いは、どこへ辿り着くのか。
そして、共有されるはずのなかった幻想は、蓮子とメリーの間に何をもたらすのか。
「黄昏の百合の色」
「走らにゃいかん、月夜まで」
「鍵は閉ざされたまま」の3編を収録。
幻想郷の外側の、小さな謎と幻想を描く、秘封倶楽部のミステリ風短編連作、第12巻。
「今の子、メリーの知り合い?」 「あ、ええ、そうなんだけど――」 正確には今日初めて顔を合わせたばかりなのだが、まあ知り合いといえば知り合いか。 しかし――あれはいったい、どういうことだろう? 「狐につままれたみたいな顔して、何か気になることでもあるの?」 「うん……今の子、黒いランドセル背負ってたでしょ?」 「女の子でも黒いランドセル使うわよ。私もそうだったし」 ああ、確かに蓮子は男の子に混じって黒いランドセルを背負っているのが似合うかもしれない。小学生の蓮子ってもうひとつ想像がつかないけれど――とか、そういうことではなく。 「そうじゃなくて。――今の子、今朝見たときは赤いランドセルだったのよ」 (「黄昏の百合の色」) |
「貴女……ひょっとして、宇佐見さん?」 「あ、やっぱり依子さんじゃないですか」 「なに、蓮子、知り合い?」 「ああ、いや――」 蓮子が何か答えかけたところで、依子さんと呼ばれた女性が、蓮子の受け止めた少女を見やって、その表情を険しくする。少女はびくりと身を竦めて、こそこそと蓮子の背後に隠れようとしたが、その前に怒声が響き渡った。 「イナバさん!」 「はっ、はひぃ!」 イナバさん、と呼ばれた少女は、依子さんの一喝に条件反射のように直立不動で固まる。依子さんはゆっくりと石段を上ってイナバさんに歩み寄ると、竹刀を持った手を腰に当て、じっと彼女の目を覗きこんだ。 (「走らにゃいかん、月夜まで」) |
「お待たせ」 私と神山さんが先に座っていたテーブルに、蓮子も腰を下ろす。ちょうど注文をとりにきた店員さんにコーヒーを三人分頼んでから、私たちは改めて神山さんに向き直った。 「すみません、お時間をとらせて」 「いやいや、お気になさらず。で、どんなご用件かしら」 律儀に頭を下げる神山さんに、蓮子は飄々と首を振って訊ね返す。神山さんはまた数瞬のあいだ口ごもり、それから意を決したように顔を上げた。 「――あの、宇佐見さん。昨日以降、にとりと会ったり、連絡を取ったりしていませんか」 思いがけないその言葉に、私たちは顔を見合わせた。 (「鍵は閉ざされたまま」) |
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