『満月が永遠に続けば 少女秘封録』特設ページのようなもの
2006.05.11 Thursday | category:-

著:浅木原忍
表紙:麦畑
挿絵:うそねこ
発行:Rhythm Five
文庫版/388ページ/イベント頒価1200円/書店価格1680円(税込)
2011年8月13日(土) コミックマーケット80(2日目)
東5ホール フ-54b「Rhythm Five」にて頒布
とらのあな・メロンブックス・ホワイトキャンバスにて委託販売予定
※2010年発行の『満月が永遠に続けば』上下巻を一冊に合本、加筆修正した新装版です。
付録として、芥川龍之介『藪の中』の全文を収録してあります。
また再版にあたって、「15年前の一家焼死事件」の真相を書き直しました。
『藪の中』の推理に関しては旧版から若干の修正のみとなっております。
表紙は新規書き下ろし、挿絵も全面的にリファインされています。
さようでございます。あの死骸を見つけたのは、わたしに違いございません。わたしは今朝何時もの通り、裏山の杉を伐りに参りました。すると山陰の藪の中に、あの死骸があったのでございます。――……。

郊外の竹林にやってきた蓮子とメリーは、その奥にあった屋敷で、武田かぐやと名乗る美しい少女と出会う。
話の流れで、芥川龍之介の短編『藪の中』の謎解きを出題されてしまったメリーの前に、浮かび上がるもうひとつの謎。
「かぐやは、私が殺したんだ」
「ともちゃんは、私が殺してしまったの」
――それはまるで『藪の中』のような、不可解な殺人の告白だった。
芥川の残した『藪の中』の真相と、15年前の一家焼死事件。ふたつの謎は絡み合う。
誰が死に、誰が殺したのか。
蓮子とメリーの前で語られる複数の《真実》は、互いに矛盾し、すれ違う。
その中に、ただひとつの《事実》を定めることは可能なのか?
少女秘封録シリーズ第3巻に加筆修正、上下合本した新装版。
――旧版とは異なる真相が、ここにある。
![]() | 私が訝しげに見ていることに気付いたか、藤川さんは煙草を指で挟むと、皮肉げな笑みを浮かべたまま、こちらにそれを差し出した。 「なんで私が、『地獄変』が嫌いなのかっていうとな――」 ぞくり、と。 その笑みに、ひどく酷薄な影が重なった気がして、私は小さく身を竦めた。 今目の前にいるのは――本当に、藤川朋子さんか? 神沢景子さんを慈しみ、思いやり、隣で笑っている、あの藤川朋子さんなのか? そんな私の疑念に構わず、藤川さんは言葉を続ける。 皮肉げな笑みを浮かべたまま、声を低くして、――そう、白状する多襄丸のように。 「――人を、焼き殺したことがあるからだよ」 |
![]() | 「どこまでご存じなの? 父のこと、母のこと――ともちゃんのこと」 「全て知っている、とも言えるし、何も知らない、とも言えます」 「意地の悪い答えだわ」 拗ねたように軽く頬を膨らませて、それからかぐやさんは力ない微笑を浮かべた。 「私を、捕まえに来たわけではないの? 名探偵さん」 ――え? かぐやさんが何を言ったのか、咄嗟に私には理解できなかった。 「父と母と、親友を――殺してしまった、私のことを」 泣き出しそうな笑みのまま、かぐやさんはそう言った。 蓮子はただ黙して、かぐやさんを見つめていた。 |
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